シャープが2012年8月中の合意を目標に進めてきた台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業との資本提携の見直し交渉は、鴻海の郭台銘董事長が来日したにもかかわらず、結局は合意に至らず結論を持ち越した。
しかも郭董事長は、奥田隆司社長を含めシャープの幹部らと一度も顔を合わすことなく、台湾へ帰ってしまったという。いったい何のために日本に来たのか、シャープも困惑している。
奥田社長らと一度も顔を合わせず台湾へ帰った。
シャープとの資本提携をめぐる交渉のため来日していた鴻海精密工業の郭台銘董事長が2012年8月30日午後、シャープと同社が共同運営する液晶パネルの主力工場であるシャープ・ディスプレイ・プロダクト(SDP、堺工場)を訪問した後、予定していた記者会見を欠席して突然台湾へ帰ってしまった。
SDPでは、製品サンプルを手にするなどしながら、台湾の経済代表団とともに終始なごやかなムードで見学していた。ところがその後、郭董事長が日本や台湾の多くのメディアの前に姿を見せることはなかった。
これに一番驚いたのは、おそらくシャープの幹部らだっただろう。シャープは、郭董事長が来日することで、鴻海との提携交渉が大きく前進すると思っていた。
ところが、郭董事長は当初予定していた同日午前の協議の場に姿を見せず、奥田社長と鴻海グループのナンバー2である戴正呉副会長とで協議に入った。さらには、午後のSDP訪問後も協議の機会を失った。
結局、「詰め」の協議どころか、郭董事長の顔を見ることもなく、シャープは結論を持ち越しにせざるを得なくなったわけだ。
郭董事長が急きょ台湾に帰ったことについて、シャープは「何も知らされていませんでしたし、(台湾に帰ったことも)報道で知ったほどです。その後も(鴻海側からは)いまだに(31日時点)具体的な説明はありません」と話す。
シャープは30日夜、「(出資条件などについて)両社で継続協議しており、内容が決まり次第、速やかに公表する」とのコメントを発表したが、「お互いに、詰めの協議ができると思っていたのに・・・」と落胆する。