執行部に批判的な民主党の国会議員から、田中真紀子衆院議員(68)を党代表選候補に推す動きが出ている。外相時代に更迭騒ぎがあった田中氏だが、それでも議員らが担ぐ狙いは何なのか。
「注目を集める代表選にしたい」「田中さん以外には考えられない」
田中真紀子氏を推す議員グループの川上義博参院議員は2012年8月28日、報道陣に対し、こう強調した。
高い知名度を生かそうとした
報道によると、この日は、「女性宰相を誕生させる会」として、民主党の12議員が都内で会合を持った。参加したのは、ほかに筒井信隆前農水副大臣らだ。そこで協議した結果、9月21日の代表選に向け田中氏に立候補要請することで一致した。
理由は、野田佳彦首相がすんなり再選する流れでは、同じ時期の自民党総裁選に埋没する恐れがあり、田中氏の高い知名度を生かそうとしたからだ。反野田陣営では、予備選挙を行うなどして、対抗できる統一候補を立てる動きを見せていたが、田中氏なら対抗馬を一本化できるとにらんだともいう。
田中氏といえば、自民党時代に、歯に衣着せぬ言動で人気を集め、2001年の小泉純一郎首相誕生にも一役買った。しかし、小泉内閣の外相として官僚と対立するなどし、外交が停滞したとして更迭された。また、02年には、秘書給与流用疑惑が発覚して、議員を辞職するまでになっている。
ネット上では、民主党の中ではまだましだとし、初の女性首相に期待する声もある。とはいえ、こうした経緯から、「毒舌が長けているだけ」「大臣時代があまりに酷かったからなあ」「人材がいないねえ、消去法か」と冷ややかな声の方が多い。
田中氏が浮上した背景について、政治評論家の有馬晴海さんは、こうみる。
「当選して首相になる可能性はない」
「執行部は面白くないという議員たちが、主導権を奪うため、だれかいないかと党内を探しました。しかし、反執行部には、なかなか優秀な人がいない。そこで、目をつけたのが、かつて国民の人気が高く、選挙に有利と重宝がられた田中真紀子さんだったわけです。確かに、小泉政権のときにミソをつけましたが、当時はそれぐらいの影響力、インパクトがあったわけです。今は、ひところのマイナスイメージも薄くなっていますね」
田中氏は、民主党在籍時の小沢一郎元代表から目をかけられており、党内に残った小沢寄りの議員から、小沢氏の代わりとみなされていることもあるという。
「推薦人は、20人集められるかもしれません。田中さんが代表選に出られる可能性はあり、その場合は、消費増税反対や脱原発などの声から、そこそこの票は取るでしょう」
ただ、有馬晴海さんは、田中氏が当選して首相になる可能性はないのではないかと言う。
「国民からは、『遠見の富士』と分かってしまったからです。遠くから見ればきれいですが、近くからは……ということです。本人は、白羽の矢が立って、うれしそうですが、結局、恥ずかしいからと言って出ないかもしれませんね」