羽田空港の国内線発着枠が増加するのに伴い、航空会社に新たな枠を配分するための基準を決める協議が国土交通省で始まった。焦点の一つは経営破綻し再建を進める日本航空の扱いだ。
2012年8月22日に開かれた国交省有識者会議ではライバルの全日本空輸から「破綻した企業は配分を受ける資格がない」との発言が飛び出し、「ドル箱」である羽田発着枠を巡る争奪戦に火がついた。
年内に配分決める
羽田の国内線枠は現在、年間32万回だが、2013年3月末からは34万回と2万回分(1日25便)拡大する。今回はこの2万回分について、国交省は有識者会議の方針に従い、年内には配分を決めたい考えだ。
22日の有識者会議では、配分の対象になる国内航空6社のトップや役員が出席し、意見を述べた。この中で全日空の清水信三・上席執行役員は「航空法では、羽田などの混雑空港の発着枠を適切、合理的に使用することが配分を受ける大前提だとしている。破綻した航空会社は資金繰りを支えるスポンサーがいなければ運行停止に陥る恐れもあり、適切・合理的に使用することはできない。配分を受ける資格はないと見なすべきだ」と訴えた。日航を名指しこそしなかったものの、明らかな「日航外し」を主張する内容だった。
北海道国際航空(エア・ドゥ)の斎藤貞夫社長も「市場のリーダーが公的支援を受けつつ、さらに競争力を高めれば、競争環境がゆがめられる。今回の発着枠配分を通じてシェアの適正化を図る必要がある」と発言、日航への配分には慎重であるべきとの認識を示した。
一方、日航側は破綻と配分問題の関係には触れず、独自の主張を展開した。同社の米沢章執行役員は「国内線の配分は、単に国内線ネットワークの充実ととらえるべきではない。海外から訪日需要を取り込む機会と考え、国際線との連携も考慮すべきだ」主張。豊富な国際線ネットワークを持つという自社の特徴を訴え、配分を強く求めた。
消費者の利便に配慮すべき
経営破綻したものの、公的資金を得て急速に業績を改善している日航に対し、全日空などの不満は高まっている。「自助努力で健全な経営をしている同業者にとって、公正・公平な競争環境であるとはいえない」と懸念しているためだ。衆院国交委員会では8月、自民党などの要望を受けて日航の再建問題に関する集中審議が2度も開かれ、公正な競争環境を築く必要性が議論された。
発着枠配分に関する全日空などの主張はこうした流れの一環で、「新たな発着枠は日航以外に傾斜配分して、競争環境のゆがみを緩和すべきだ」との考えが背景にある。
ただ、傾斜配分については否定的な声も少なくない。「行政が裁量的に判断すれば、政治や行政が経営に介入したことが破綻の一因になった、かつての日航と同じになってしまう」(業界関係者)との見方もあるためだ。「発着枠の配分はあくまで消費者の利便に配慮した合理的な判断で決めるべき」(同)との指摘も強い。