尖閣諸島の領有問題をめぐり日中間の緊張が高まる中、中国・貴陽で開催されるライブイベント「YOGA MIDIフェスティバル」に出演予定だった日本のロックバンド・LOUDNESS(ラウドネス)が当日の2012年8月24日、中国政府からの要請で突然出演を中止させられた。
ラウドネスは1981年結成、日本ヘヴィメタル界の草分けとして30年にわたって活動を続ける国際的人気バンドだ。24日夜のステージに登場する予定で、メンバーは前日夜に南西部の地方都市・貴陽に到着、当日の朝にはボーカルの二井原実さんがブログを更新し、「超絶シャウト行けるぞ~~~!!」とやる気をみなぎらせていた。
私服の公安がメンバーを監視
イベント責任者から出演中止が告げられたのは、その直後のことだった。上の投稿から1時間半後、二井原さんはブログを再び更新、
「日中問題悪化により、中国政府からの要請でLOUDNESS出演出来なくなりました……」
と発表した。世界各国でライブを行ってきたラウドネスだが、「政治的な問題でコンサートキャンセルされたのは初体験」。その上外出すると、「私服公安」が常に数人がかりで尾行してくるという厳戒態勢だったといい、結局二井原さんはほぼ丸一日、ホテルに缶詰状態だった。
二井原さんは突然の中止に肩を落としつつ、
「中国政府のライブ中止要請は、考えようによっては、暴動が起こって日本人のメンバーやスタッフの怪我や命の危険の回避と言う側面もあるのか? いやいや、中国政府の本音は観客の暴動から反政府抗議運動に発展するのを回避する……やろなきっと」
と中国側の思惑を推測する。
ネット上では、バンドがジャケットなどに「旭日旗」を好んで使うことを恐れたのではという見方もあるが、いずれにせよ当日になっての出演中止、また当局からの監視など、異例の事態には間違いない。
2010年にはSMAPも公演中止
ただこうした事例は、今回が初めてではない。2010年、尖閣沖での中国漁船衝突事件で日中関係が緊張した際には、日本への圧力の一環として、10月に上海で予定されていたSMAPの公演が取り止めさせられるという騒動があった。日本国内でさえ韓国との関係が悪化する中、「韓流スターの入国を拒否しては」という話が国会で大真面目に語られるほどだ。
ラウドネスは26日、香港での単独公演を予定している。今のところ開催されるかは定かではない。