韓国の李明博大統領の竹島上陸や天皇陛下への謝罪要求発言などをきっかけに、日韓関係がギクシャクするなか、人気の韓国旅行への影響がどうなるか注目されている。「反日感情」の高まりで、渡航制限などの措置がとられることにでもなれば、旅行会社にとっては痛手だ。
一方、国内での「反韓ムード」の広がりもあって、日本に訪れる韓国人観光客数が減少する可能性もある。「観光立国」をめざす日本としては、これも打撃であることは間違いない。
人気の韓国旅行「現地の受け入れも差しつかえなし」
法務省や日本政府観光局(JNTO)によると、2012年6月の出国日本人数(推計値)は147万5000人で、前年同月に比べて16.4%増えた。海外旅行の定番ともいえるハワイやグアムのほか、台湾やシンガポール、マレーシアなどアジア諸国への渡航が増えている。
韓国も、ウォン安を背景としたショッピングなどを目当てにした女性を中心に人気だ。日本から韓国に出国した人は、6月は30万2383人で、前年同月に比べて18.6%増えた。1~6月の累計では181万7043人と、同30.2%も増えている。
大手旅行会社のエイチ・アイ・エス(HIS)は、「韓国人気はウォン安もありますが、やはり日本から近くて、手軽に行けることがあります」と話す。
そうしたなかで起こった今回の「竹島問題」だが、日本人が韓国旅行を敬遠するような事態は起こっていないのだろうか――。現在すでに「秋旅ビッグセール」として「ソウル3日間・1万9800円~3万3800円」を販売しているHISは、「今のとこころ、大きな影響はでていません」という。
「この秋の連休は3日間しかないので(韓国は)出かけやすいといえます。(竹島問題が)気にならないことはありませんが、現地の受け入れも差しつかえないとの報告を受けています」と話している。
キャンセル情報なし 「大きな変化はないですね」
一方、JNTOによると、2012年7月の訪日外国人客数は84万5300人で、前年同月に比べて50.5%増えた。中国をはじめ、台湾やタイ、ベトナム、インドネシアといったアジアからの訪日が増えている。中国は単月ベースで過去最高を更新したほど。ただ、東日本大震災前の10年7月と比べると、韓国や欧州からの訪日客が回復しないため、3.8%減っている。
日本を訪れた韓国人は、7月は18万9700人。前年同月に比べて35.4%増えたが、10年7月と比べると19.6%減っている。JNTOは、韓国からの観光客が回復しないのは「原発事故による放射能汚染への懸念が大きい」という。円高の長期化で、日本への旅費の割高感もある。
JNTOは「8月(の統計)はまだですが、竹島問題によって、韓国からのキャンセルが相次いでいるとの情報はありませんし、大きな変化はないですね」という。
とはいえ、日本国内での「反韓感情」が高まりで、韓国観光公社の東京支社に訪日韓国人観光客の安全を脅かす電話やファクスが届いているとの情報もある。
韓国政府が7月に福島県への渡航制限を緩和した矢先だけに、韓国人観光客の安全確保を理由に再び渡航制限を強化するようなことになれば、韓国のみならず、尖閣問題で揺れる中国や台湾などを含めた訪日外国人観光客の減少も予想される。