津波により医療施設が壊滅した石巻市雄勝町
宮城県石巻市の雄勝町では、全家屋の9割が津波による被害に遭い、消防署や郵便局、学校、ガソリンスタンド、商店など、生活に必要なすべての施設が失われました。
総合病院や歯科診療所などの医療機関も全壊しました。大学病院が震災直後から行っていた巡回歯科診療が昨年9月に終了した後は、地域の方々は1日に数本しかないバスで、約1時間かけて石巻市中心部の歯科医院まで通っていました。入れ歯を使用しているなど、口腔ケアがより必要な高齢者の方々にとっては、大きな負担となっていました。
「町に歯医者さんが戻ってきた!」
AAR Japan[難民を助ける会]は、石巻市の要請を受け、同地区にプレハブの仮設歯科診療所を建設しました。震災直後から被災地で診療支援を続けていた長野県の歯科医師、河瀬総一朗氏が家族とともに宮城県に移り住み、所長を務めています。
6月4日、石巻市長らが出席して開所式が行われました。河瀬氏は「必要な治療を受けていない、または中断している人が多くいらっしゃいます。気軽に治療を受けに来てもらえる診療所にしたい」と決意を話しました。診療を開始して以来、町外から通院する方もおり、連日多くの患者が来院されています。
高齢者も安心して暮らせる町になってほしい
震災前4,300人だった町の人口は、現在約1,300人。 施設がほとんどなくなった上に仮設住宅を建設する土地もないため、人口の4分の3が町外に避難しています。町は高台移転に向けて準備中ですが、元々高齢・過疎化が進んでいた雄勝町へ住民が戻るかどうか、その見通しはまだ立っていません。
今回の支援では、身体が不自由な方も来院できるようにトイレを広く設計したり、通路には手すりを設置するなど、建物をバリアフリーにしました。また、通院が難しい方への訪問治療も行っています。高齢になっても安心して暮らし続けられる地域づくりの一助となればと思います。
AARは2012年7月までに、岩手、宮城、福島の3県で57の被災した障害者・高齢者施設の修繕、再建支援を実施しています。
※この活動は、皆さまからのご寄付に加え、AmeriCaresの助成を受けて実施しました。
(AAR仙台事務所 蛯名 誠)
●チャリティコンサート「忘れないで3.11」
AAR Japan [難民を助ける会]では、9月13日に東日本大震災被災地復興支援のためのチャリティコンサートを開催いたします。
http://www.aarjapan.gr.jp/join/event/2012/0913_919.html
公演の収益は、すべてAAR Japanによる東日本大震災被災地復興支援活動に充てさせていただきます。皆様のお越しを心よりお待ちしております。
AAR Japan[難民を助ける会]
1979年、インドシナ難民を支援するために、政治・思想・宗教に偏らない市民団体として日本で設立された国際NGOです。
2011年3月11日に発生した東日本大震災を受けて、地震発生当日より活動を開始。宮城県仙台市と岩手県盛岡市に事務所を構え、緊急・復興支援を行っています。
活動にあたっては、特に支援から取り残されがちな障害者や高齢者、在宅避難者、離島の住民などを重点的に支援しています。食料や家電などの物資の配布、炊き出し、医師と看護師による巡回診療など、多面的な活動を続けています。
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