韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領が、大統領としては初めて訪問したことで日韓の火種になっている竹島(韓国名・独島)をめぐり、日本メディアの表現に、ちょっとした変化が起きている。これまでは、「枕詞」として「日韓が領有権を主張している」といった比較的中立的な表現が多かったが「島根県の竹島」という表現が増えているのだ。韓国側は、この表現の変化には、日本の領有権を強調する狙いがあるとみているようだ。
上陸前は「日本と韓国の双方が領有権を主張する竹島」が一般的だった
李大統領が竹島への上陸を強行したのが、2012年8月10日午後。この前後で、「枕詞」に変化が起きている。例えばNHKの場合、上陸計画が明らかになった8月10日午前の段階では
「日韓両国の間で領有権をめぐって争いのある島根県沖の竹島」
との表現だったが、翌11日からは「島根県の竹島」の表現が登場している。
朝日新聞の場合、5月11日時点では
「日韓が領有権を主張する日本海の『竹島(韓国名・独島)』問題」
と表現されていたが、8月10日朝の「韓国大統領、きょう竹島へ 日本は中止を要求」と題した記事では、
「島根県の竹島(韓国名・独島〈トクト〉)」
となった。日経新聞は8月10日朝時点では
「日本と韓国の双方が領有権を主張する竹島(韓国名・独島)」
だったが、それ以降は同様に「島根県の竹島(韓国名・独島)」という記述が増えた。読売新聞、毎日新聞も、同様の傾向だ。
尖閣諸島の表現は大きく変化せず
竹島をめぐっては、産経新聞のみが独自の枕詞を用いており、李大統領の上陸前も
「日本固有の領土である竹島(韓国名・独島)」
「日本固有の領土で韓国が不法占拠している竹島(韓国名・独島)」
などと表現。それが、上陸強行後は
「日韓両国が領有権を主張し韓国が実効支配する島根県の竹島(韓国名・独島)」
「日本固有の領土で韓国が不法占拠している島根県の竹島(韓国名・独島)」
と、やはり「島根県」の表現が加わっている。
こうした日本の大手メディアの表記変更については韓国側でも気づいており、聯合ニュースは、
「独島が島根県にある日本の領土ということを強調する狙いがあるとみられる」
と論評している。
なお、尖閣諸島については、香港の活動家が不法上陸する前から、各社は「沖縄の尖閣諸島」という表現を使っている。「尖閣諸島をめぐって解決しなければならない領有権の問題は、そもそも存在しない」とする政府見解が背景にあるようだ。