日本国内でバターは政府が輸入を管理する「国家貿易」であることをご存知だろうか。国内で流通するバターと脱脂粉乳は、国内の酪農を保護するため、基本的には国内産で賄い、足りない分に限って政府が輸入し、乳業メーカーなどに売り渡すことになっている。もちろん、外国産バターの輸入には高関税がかかっているため、民間業者が事実上、バターを輸入できない仕組みになっている。
在庫不測で国内価格が上昇
農水省はこのほど、バターの最需要期である年末のクリスマス商戦に向け、国内のバターが不足する可能性があるため、業務用の冷凍バター2000トンを追加輸入すると発表した。追加輸入は昨年も行われており、1995年の現行制度発足後、今回が通算で3回目。
「追加輸入とはあくまで緊急的に輸入する措置であって、あまり頻繁に行うべきものではない」(農水省関係者)という。バターの卸売価格は在庫の減少から上昇傾向にあり、今年6月には1キロ当たり1189円と、前年同月比で9.4%上昇した。
国内のバターの需要は年間約8万トンで、日本はWTO(世界貿易機関)の国際協定に基づき、「カレントアクセス輸入」と呼ばれる国際約束数量(年間7459トン)を毎年、輸入することになっている。今年は2月に4000トン、5月に3459トンを既に輸入したため、今回発表の2000トンは追加輸入となるわけだ。
農水省は今回の追加輸入について、2010年の猛暑と2011年の東日本大震災の影響で生乳の生産が落ち込み、在庫不足になったためと説明している。2010年の猛暑で乳牛の乳が出にくくなったり、子牛が生まれなくなったりなどの影響があったほか、昨年は震災による停電で生乳約4万トンを廃棄処分したことなどが響いたという。