日本の体操選手が五輪で着ていたユニホームについて、韓国のオリンピック委員会(KOC)までもが「旭日旗を連想させる」と難癖をつける事態になっている。しかし、そう言わざるを得ない国内事情があるようだ。
日本の体操ユニホームについて、旭日旗を連想させ、国際的な非難が出ているなどとはこれまで報じられなかった。ところが、韓国内では、男子サッカーの3位決定戦後になって、にわかに世論が盛り上がってきた。
コシノヒロコさん側は、旭日旗イメージを否定
「独島セレモニー」をしたパク・ジョンウ選手の銅メダルはく奪が現実味を帯びると、旭日旗表現は許してセレモニーは許さないのは公平性に欠けるとの声が強まったのだ。韓国のネット上では、ジョンウ選手の行為は偶発的だが、日本の行為は計画的で悪質だといった意見が相次いでいる。韓国メディアでは、「国連ファッション」という団体のデザイナーらがIOCなどに異議申し立てをすると報じられ、そして、ついには、KOCまでもが動くことになった。
KOCのパク・ヨンソン会長が2012年8月17日、韓国国会の委員会に出席し、日本のユニホームについて、日本による戦争被害国とともに共同で抗議したいと表明した。その理由としては、旭日旗が日本の軍旗として戦時中に使われており、被害国の人々の感情を逆なでするものだということらしい。
ユニホームについては、5月11日に日本で記者発表された。当時の報道によると、赤色を中心に五輪マークの5色を周囲に配した日の丸が左脇腹周辺にグラデーション状にデザインされ、そこから帯となってエネルギーが発散する様子が表現されている。
手がけたのは、世界的デザイナーのコシノヒロコさんだ。日が昇る躍動感と夜明けの輝きをイメージしたといい、どこにも旭日旗をモチーフにしたなどとはうたっていない。
事務所のヒロココシノに取材して、旭日旗をイメージしていないことを確認すると、広報担当者は「もちろんです」と強調した。
難癖をつけざるをえない「国内事情」がある
体操ユニホームのデザインについて、これまで苦情も一切ないとした。KOCパク・ヨンソン会長の発言については、「コメントは一切控えさせて下さい」と広報担当者は話した。
日本体操協会でも同様な反応で、事務局長は取材に対し、「KOCなどからお話がありませんので、正式なコメントは出せません」とした。ユニホームへの意見なども、今までに聞いたことがないという。JOCの事業広報部でも、KOCから何も話はなく、ユニホームについての意見も来ていないとしている。
韓国の大手紙「中央日報」がIOCのジャック・ロゲ委員長に単独インタビューした2012年8月14日付記事によると、ロゲ委員長は、ユニホームに論争があるというのは初耳だとし、問題にならないという見解を示した。ユニホームについては、IOCでも議題になることはなさそうだ。
それでもKOCがこだわる背景には、国内の政治事情があるらしい。任期満了が近いイ・ミョンバク大統領は、自ら竹島を訪問したほか、天皇陛下にも謝罪を求めて、実績作りに躍起になっている。そんな中で、「独島セレモニー」について韓国サッカー協会の会長がジョンウ選手の弁護に駆り出されており、KOCのヨンソン会長も何らかの突き上げにあってユニホームに難癖をつけざるをえない状況のようだ。
こうした騒ぎを受けて、日本のネット上では、「このまま冬季オリンピックを開催させちゃっていいのかね・・・?」などと、早くも2018年開催予定の平昌五輪を危ぶむ声まで出ている。