小麦の国内生産は回復
これらマイナスの要因(寄与度でコメがマイナス0.5ポイント、魚介類がマイナス0.1ポイント)を大きく跳ね返したのは、国内の小麦の生産(寄与度でプラス0.4ポイント)だ。小麦は天候不順で作柄が悪かった前年に比べ、2011年度は生産量が回復し、なんとか自給率の低下を食い止めることに貢献した。
自給率は「ご飯に魚」といった日本の伝統的な和食中心の食生活であれば高い数値となり、逆に「パンやパスタに肉」といった食生活の欧米化が進むと下がる傾向となる。コメや魚が国内で自給できる割合が高いのに対して、小麦や肉は輸入の割合が高くなるためだ。国産肉や乳製品であっても、家畜の飼料にトウモロコシなどを輸入していると、自給率は下がることになる。
自給率39%は主要先進国の中で最も低く、日本が食料の多くを輸入に頼っている現実を意味する。自給率の目標50%とは、1980年代後半の水準で、87~88年度は2年連続で50%をつけた後、89年度に49%に転落した。当時はバブル期で食生活の欧米化(グルメ化)が一気に進んだ時代だ。農水省は「今振り返ると、80年代のバブル期前の食生活は自給率の点ではバランスがとれ、理想的だった」という。
今夏の米国の干ばつでトウモロコシ、大豆など穀物価格が高騰すると、食料自給率の低い日本は食品価格に影響を受けやすくなっているのは事実。自給率の目標に明確な根拠があるわけではないが、専門家の間では食料安保上、過半の50%以上を目指すべきという意見は根強い。
民主党政権は看板政策の農家の戸別所得補償制度を活用し、飼料米や米粉を栽培した農家にインセンティブを与えるなど自給率を引き上げようとしているが、有効な打開策が見つからないのが現実だ。