韓国経済が急激に失速している。一番の原因は、これまで韓国経済を引っ張ってきた原動力である輸出に陰りが見え始めたためだ。
輸出に次いで内需の鈍化も懸念されている。住宅価格の下落とそれに伴う消費や投資の抑制がみられ、バブル崩壊以降日本が苦しんだ「日本型長期デフレ」の兆候が現れている、との指摘も少なくない。
好調に見えたのはヒュンダイやサムスンだけ
韓国の輸出は、2012年7月の通関ベースで前年同月に比べて8.8%減と大きく減った。マイナス幅は3年ぶりの高い数値だという。
これまで韓国の輸出をけん引してきた自動車の輸出が頭打ちになったのをはじめ、船舶や石油化学製品、携帯電話など主力製品の輸出が急速に落ち込んだ。
韓国の輸出額は国内総生産(GDP)対比で50%を超える。「輸出国」といわれる日本でもGDP対比では10%半ばだから、輸出依存度の高さは圧倒的だ。そのため、輸出の不振は即韓国経済の失速に直結する。
なかでも韓国経済を支えてきたのが欧州連合(EU)向けの輸出。EUとは自由貿易協定(FTA)を結んでいる。そのEU向けが12年1~6月期には前年同期に比べて16.0%も減った。EU諸国の債務危機から発した景気低迷が影響した。
さらには中国向けも1.2%減った。第一生命経済研究所経済調査部の主任エコノミスト、西濵徹氏は、「中国向け輸出の減少はボディブローのように効いています」と話す。韓国の素材や部品メーカーは中国を介して、間接的にEU向け輸出を増やしてきたからだ。
急激に輸出が悪化した原因を西濱氏は、「韓国はヒュンダイやサムスンといった大手企業が輸出をけん引してきました。それらの企業の業績が好調だったから韓国経済も好調に見えてきたといってもいいでしょう。大手と中小の格差は大きく、いわば弱肉強食の状況を抱えた、いびつな成長してきた危うさがそもそもありました」と説明。そうした矛盾や弱点が表面化してきたとみている。
悪い材料はまだある。これまで安かったウォンが上昇してきたのだ。ウォンは5月に1ドル1180ウォンの高値を付けたが、8月1日にはその時からさらに5%上昇し、1ドル1126ウォンとなった。ウォンの上昇が輸出に少なからず影響してきた。