ソニー傘下のソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が、多機能携帯電話(スマートフォン)向けのゲーム配信に本腰を入れることになった。家庭用ゲーム機の売り上げが伸び悩みが背景にあるとみられ、出荷台数が急増しているスマホ向けの配信で新規市場の開拓を狙う。
1ゲームあたりの価格は大幅に安くなる?
SCEは2012年8月15日、12年秋からモバイル端末向けサービス「プレイステーションモバイル」のコンテンツ配信を日本、米国、カナダ、英国など世界9か国で配信を始めると発表した。
SCEでは11年12月から、「プレイステーション・スイート」という名称で、ソニーモバイルコミュニケーションズ製のスマートフォン「エクスペリア」(Xperia)の一部機種向けに過去の人気ゲームを配信してきたが、これを本格化させる形だ。
具体的には、グーグル社のOS「アンドロイド」が搭載されたスマホに専用ソフトをインストールし、同ソフト上でゲームを購入する仕組みが提供される。サービス開始時には、アクション、アドベンチャー、パズル、スポーツなど30種類のゲームが用意される。
これらのゲームは、「プレイステーション・ストア」と呼ばれる窓口を通じて配信される。ソニーに対して年間99ドルのライセンス料を支払えば、ソニー以外の会社も「プレイステーション・ストア」でコンテンツ販売ができ、すでに世界中の85の事業者が参入を表明している。スマホ以外にも、アンドロイド搭載の端末や、次世代ゲーム機「プレイステーション・ヴィータ」でも利用できる。ゲームの販売価格は未定だが、ゲーム機専用のソフトと比べると大幅に安くなるとみられている。
7月には「クラウドゲーム」草分けの買収を発表
この背景には、ゲーム専用機市場の伸び悩みがあるとみられている。例えば、電子情報技術産業協会(JEITA)と情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)の発表によると、11年の国内向けハードウェアの総出荷額は前年日1.1%減の1649億円。「頭打ち」または「微減」といったところだ。
それに対して、日本国内では11年にはスマホの出荷台数が初めて1000万台を超え、それにともなってスマホ上で動くゲームの市場も急拡大している。今回のソニーの取り組みは、この状況を踏まえたものとみられる。
SCEは、7月2日、ゲーム開発メーカー「カイカイ」(米カリフォルニア州)を約300億円を投じて買収すると発表したばかり。同社は日本ではほぼ無名だが、インターネットを通じて、同じゲームをPCやスマホ、テレビといった様々な端末で楽しめる「クラウドゲーム」の草分けとして知られている。業界内では「ソニーはゲーム専用機に見切りをつけたのではないか」との見方も出ていた。