「秀喜」から「裕樹」の時代に
松井の登板試合はプロのスカウトが顔をそろえる。日本は全12球団がずらり。「今でも抑えで使える」「今年のドラフトでも1位」と賞賛の感想ばかり。結論は「来年のドラフト1位は確定」。実は大リーグ球団も参加しており「米国に来れば大成間違いなし」。早くも「日米争奪戦」の様相なのである。
この中で「縁」を強調するのはDeNA。「(横浜出身の)松井は小学生時代にベイスターズジュニアに所属していた」と言う。また、「松井が中学時代に日本一になったころから目を付けていた」と巨人も売り込む。
松井の素質は誰もが認めるところである。心配するのは日本独特の「ひいきの引き倒し」だ。甲子園大会が終わった後、まずマスコミは公式戦、練習試合を問わずすべての試合を取材するだろうし、私生活も追いかけるまでエスカレートするだろう。オリンピックが終わったことで、新しいヒーローを求めるマスコミにとって絶好の標的だ。
ファンも追っかけを編成する可能性がある。間違いなく松井の環境は変わり、家族、学校は野球以外のことで神経を使うことになる。日本球界で松井といえば大リーガーのゴジラ松井秀喜だったが、この夏で「秀喜」から「裕樹」に、その代名詞が置き換わる事になるかもしれない。(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)