訴訟のための書類送付「すら」していなかった
仮に韓国の合意が得られなくても、日本単独で行動を起こすことで1歩が踏み出せないだろうか。外務省国際法課では「(日本側から)アクションはとれます」と話すものの、仮に日本だけが訴え出たところでICJは審理を開始できないとも説明する。韓国が「知らん顔」をしている点をICJに訴えて、韓国が裁判を受け入れるように促してもらおうと期待しても、国連機関であるICJが日本に「肩入れ」する動きをみせる可能性はゼロといえよう。
ICJの枠を超えて、国連の別の場で国際社会に日本の立場をアピールするのはどうか。国連総会では、過去に何人もの国家元首が演説の中で一部の国を非難したり、自国の立場を訴えたりした事例がある。野田佳彦首相が総会スピーチで竹島問題を取り上げ、韓国を批判し続ける――。論理的には可能だろうが、日本の国際社会における役割を考えると非現実的な選択だ。
今のままでは、竹島問題は八方ふさがりなのか。元防衛省・防衛研究所統括研究官の武貞秀士氏は、2012年8月16日放送のテレビ朝日「モーニングバード!」の中で、過去2度にわたって韓国にICJへの付託を拒否された件に触れて、「日本側はハーグ(ICJ)に書類を送っていない」と指摘した。確かに日韓双方の合意がなければICJの管轄権は設定されない。だが、書類の送付「すら」していない、つまり世界に向けて何のアピールもしてこなかった事実を問題視したようだ。
今回、李大統領が竹島を訪問した点を重く見る武貞氏は、ICJへの付託に賛同する。仮に韓国が応じないとしても、何らかの形で訴訟の書類を提出すべきだと強調する。すぐさま審理開始とはいかないが、国際社会を喚起して竹島問題に注目を集めれば、韓国も裁判に応じない理由を説明しないわけにはいかなくなる、というねらいとみられる。