「近いうち解散」が先行 重要政策課題「方向さえ示せない」

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   消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革法が成立したが、これ以外の重要法案や政策課題の行方は不透明感が強まっている。大震災からの復興を含め、内外、重要な課題山積の中、「方向さえ示せない政治」への懸念が強まっている。

輿石幹事長が野党をけん制

   民主党の輿石東幹事長は2012年8月12日のテレビ番組で、「赤字国債発行法案を成立させなければ、今年度予算のおよそ40%が使えなくなる。 また、国会議員の定数削減や衆議院選挙の1票の格差の問題、原子力規制委員会をスタートさせることの、3つは仕上げなければならず、なかなか(今の国会での)解散は難しいのではないか」と述べた。民主、自民、公明3党首会談の「近いうちの解散」の解釈で、今国会中の解散を主張する野党をけん制したものだ。

   赤字国債法案は、成立しないと10月には予算の執行に支障が出かねないというのが政府の立場で、解散時期を測るポイントの一つだ。衆院の1票の格差是正も、総務省の発表(7日)で、今年3月末時点では格差2倍超の選挙区が前年より12多い84選挙区に増え、「違憲状態」が一層拡大していることから、「現行のままでも首相の解散権は縛られない」という政府の公式な立場とは別に、「このまま解散したら最高裁が違憲判決を出す可能性が高く、次期総選挙までに、実施は間に合わないまでも是正法案を成立させ、違憲解消の姿勢を示す必要がある」(与党筋)というのが政界の常識。しかし、定数削減をめぐる与野党の対立が続き、めどは立っていない。原子力規制委員会も、原発再稼働の是非と絡んで委員の国会承認がもめている。

概算要求もズレ込む

   政策課題では、来年度予算編成作業の遅れが懸念される。例年なら概算要求基準が7月中に決まり、概算要求の提出は8月末に締め切られるが、今年は基準決定が8月中、提出は9月中旬以降になる。中味も、民主党が7月末に決めた日本再生戦略を目玉に据えたい考えだが、解散時期と絡んで「誰が予算編成するか見通せなくては、目玉もクソもない」(財務省筋)。

   環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加問題は、首相支持派内に「小沢支持派がいなくなればTPP反対派もいなくなる」と、与党内の合意形成を楽観視する見方もあったが、山田正彦元農相ら反対派が残ったのに加え、選挙が近づく中で、あえて農民票などを敵に回しかねない課題に取り組むエネルギーは「急低下している」(民主党議員)のが実態。9月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議(ウラジオストック)での参加表明というシナリオはほぼ瓦解し、年内に交渉に加わるのは絶望的だ。

   原発に関しては、夏場の電力不足への緊急避難的対応として関西電力大飯原発3、4号機の再稼働を強行したが、反原発の世論の盛り上がりもあって、将来の原発のあり方と依存比率を柱とするエネルギー政策の見直し作業は見通しが立たない。

   今のところ、秋の臨時国会で、赤字国債法案や衆院定数是正法案プラス・アルファの成立を野党が「人質」にとって、最終的に解散に進むというのが、一番有力な見立てだが、9月下旬には民主、自民とも党首選を控え、野田佳彦首相も谷垣禎一総裁も、党内基盤は不安的。解散時期が両氏の再選にも直結するだけに、政策課題については方向感を示すこともできず、「政争の秋」になる可能性が指摘されている。

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