韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領が2012年8月14日、天皇陛下について「韓国を訪問したければ、独立運動で亡くなった人々を訪ね、心から謝罪してほしい」などと謝罪要求した問題で、日本国内からは、これまでになく強い反発が出ている。ネット上での韓国批判は珍しくないが、その規模が通常の韓国批判を大きく上回っている。
李大統領の支持率は「危険水域」とされる20%を下回っており、すでに政権はレームダック(死に体)だ。解放記念日の8月15日を前日に控え、国内のナショナリズムを煽って少しでも支持率回復につなげる狙いがあったようだ。
「心から謝罪する気はございません。天皇陛下は南朝鮮には行きません」
韓国の大統領が直接的な表現で天皇陛下に謝罪要求するのはきわめて異例で、日本のネット利用者は激しく反発した。例えば、ヤフーに配信される記事には、通常であれば数百件程度のコメントが寄せられるが、李大統領の発言を伝える時事通信の記事には、9300件を超えるコメントがついた。ヤフーの初期設定であれば、コメントへの賛同を示す「私もそう思う」ボタンが押された数が多い順番にコメントが並ぶが、上位のコメントは、
「心から謝罪する気はございません。天皇陛下は南朝鮮には行きません」
「越えてはいけない一戦(原文ママ)を越えましたね。終わりだよ、色んな意味で、あんた」
「天皇陛下、こんな連中は相手にしなくていいです」
といった、韓国への強い反発を表すものばかり。いずれも、韓国側が「一線を越えた」ことを念頭に置いたコメントのようだ。「私もそう思う」が押された数も、上位2つまでは10万回を超えている。
訪韓要請したのは李大統領なのに
日本メディアも痛烈に批判している。例えば、韓国批判は必ずしも多くない朝日新聞ですら、
「国家元首としての品格を失いかねないほど」
「民主化が進み、価値観が多様化した韓国では、『反日カード』も、かつてほどは効果がない」
と切り捨てた。
李大統領は08年4月21日に皇居で天皇、皇后両陛下と会見し、直接韓国訪問を要請してもいるし、過去には「日本に謝罪、反省を求めることはない」とも発言している。朝日新聞の「品格を失いかねない」との指摘は、過去の発言との不整合も踏まえているようだ。
日本政府も8月15日になって、韓国に対する反論を始めている。野田佳彦首相が「理解に苦しむ発言で遺憾」と述べたほか、玄葉光一郎外相は、発言について外交ルートで抗議したことを明らかにした上で、
「ナショナリズムを煽るような言動は、韓国のためにならない」
とも論評。藤村修官房長官は、緊急時に外貨を融通し合う日韓通貨スワップ協定について見直す可能性を否定しなかった。
また、自民党の安倍晋三元首相は、発言を「常軌を逸している」とした上で、李大統領を
「一国のリーダーの資格に疑いを持たざるを得ない」
と激しく非難した。