もともと携帯電話会社、ネットに弱さ?
ドコモでは2011年12月から今年1月にかけても、トラブルが続出した。2011年12月20日、「spモード」でメール送信した際に、実際の送信者とは全く異なる第三者のメールアドレスが受信者側で表示されるという「前代未聞」の不具合が発生。12年元日には全国でメールが送受信しにくい状態となり、1月25日は新しく切り替えた「パケット交換機」という装置のデータ処理能力が実際のデータ量に追いつかず、東京都内で約252万人に被害が広がった。
このため1月26日、総務省から行政指導を受ける。その後ドコモでは、ネットワーク設備の総点検と社内体制の強化を実施し、再発防止策と合わせて3月30日に報告書を提出、同社ウェブサイト上でも公開した。以後は落ち着きをみせていたが、7月25日以降再び「障害頻発」に陥っている。
それにしても、ドコモだけトラブルが連発しているのは不思議だ。木暮氏は、「利用者数が約6000万人に上り、膨大な量の通信量をさばく仕組みが求められるため、競合他社より不利な面はあります」と話す。ドコモ側ではネットワーク整備を進めているが、完了までに時間を要するのも事実だろう。
もうひとつ木暮氏が挙げるのが、「ドコモはもともと携帯電話の会社」という点だ。全盛時代を迎えつつあるスマホは、電話機というよりは小型のパソコン。従来型携帯電話ではモバイル通信のノウハウが最大限生かせたドコモも、インターネット接続によるデータ通信が主流となるスマホでは、「ネット対応の面で弱さが出ているのではないか」と考える。
ドコモは「日本電信電話株式会社法」の下、NTT本体から分社化して誕生した経緯がある。NTT東西やNTTコミュニケーションズ、NTTデータなどとNTTグループを構成する1社だ。移動体通信の「専門会社」ではあるが、国際電話やデータ通信については、グループ内では別の会社の「得意分野」となる。ブロードバンド事業を手がけたのちにモバイル業界に参入したソフトバンク、国際電話事業が母体のKDDIと比べると、ネット接続や海外の通信で後手に回る面があるかもしれないと木暮氏は話す。
今後のドコモの「あるべき姿」とは何か。木暮氏はひとつの例として、香港の携帯電話大手「香港移動通訊(CSL)」を挙げた。ここは他社より料金を高く設定しているが、「完璧なサポート、安定した通信がセールスポイントです」。「つながりやすさ」「安心のサービス」を一番大切にするなら、CSLの事業モデルが何らかのヒントをもたらすかもしれない。