2012年7月27日から8月12日まで開催されたロンドンオリンピックでは、フェンシング男子フルーレ団体が初のメダル獲得、体操男子個人総合で内村航平選手が28年ぶりの金メダル獲得など快挙が続き、日本は最終的に過去最多の13競技でメダル38個獲得という好成績をおさめた。
バレーボール女子の日本代表はロサンゼルス大会以来28年ぶりの銅メダルを獲得し、「東洋の魔女復活だ」と歓喜の声が上がった。日本躍進の裏には、国のスポーツ支援と「データ戦略」があった。
「NTCでやっていた競技がメダル獲得できた」
1997年、文部省(当時)保健体育審議会の答申に「ナショナルレベルのトレーニング拠点の設置」が盛り込まれた。背景には、日本のスポーツ医・科学研究が遅れており、十分な世界レベルの選手育成ができていないということがあった。これを受けて、スポーツ科学、医学、情報など最先端の研究から選手のトレーニングなどをサポートする国立スポーツ科学センター(JISS)が2001年、東京・北区に開所。豊富な練習場を備えた世界レベルのトレーニング拠点となる味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)が08年、JISSに隣接してオープンした。
ロンドンオリンピックに向けて、JISSは「Handbook」というITサービスを導入。テキストや画像、動画などのコンテンツをiPhoneやiPadなどの端末に配信し、データ解析や戦略立案ができる仕組みを整えた。フェンシング代表は相手選手の試合や自身のトレーニングの動画を約300件保存し、その動画を使って試合での得失点、攻撃・防御の回数を数値化したデータから戦略を練った。またロンドンに事務所を設置し、練習場の提供や現地の日本食、交通事情などの情報提供も行った。
NTCにはフェンシングや競泳、レスリング、体操など、メダルを獲得した競技を含む13競技の専用練習場が備えられている。専用練習場はないが、陸上とアーチェリーも代表合宿などで利用した。JISSの広報によると、北京大会が開催された08年はNTCの供用開始から7か月しか経っておらず、練習場を利用した準備は十分にできなかった。今回は4年間整った環境で十分な練習を積めたことが、メダルラッシュにつながった一因ではないかと話していた。
選手側も好成績はNTCとJISSの影響が大きいと見ている。戦後最多となる11個のメダルを獲得した競泳日本代表の平井伯昌コーチが好成績の要因について「NTC、JISSのサポートの力は大きい」と8月5日の会見で語ったほか、日本代表選手団総監督の塚原光男氏は12日の総括記者会見で、「NTCの活用が有効だった。そこでやっていた競技がメダルを獲得できた」と話している。