日本のWBC(ワールドベースボール・クラシック)出場は暗礁に乗り上げた格好である。野球だけでなく、オリンピック中にも信じがたい状況を生み出すなど、日本はスポーツ界でも「外交オンチ」らしい。
WBC参加の条件整備のため、NPB(日本野球機構)の国際関係委員長を務める日本ハムの島田利正球団社長は2012年8月13日、ニューヨークで主催者側に条件の緩和を申し入れたが、あえなく追い返された。条件の中心は収入の分配アップである。
それでも出てこない「元駐米大使」コミッショナー
「従来通りで行う。変更はありえないし、今後もない」
会談後のMLBアジアのジム・スモール副社長の言葉だ。内容は「厳しいもの」(島田社長)で、次の交渉はない、と言われたらしい。
昨年12月、NPBは13年の第3回WBC参加を表明。今年になって選手会が分配金を考慮しなければ参加しないことを決めた。前回、大リーグ側の18億円に対し、日本は2億円の分配だったそうである。日本からのスポンサー料の多さから判断してあまりにも不公平というのが言い分だった。
いずれにせよ、NPBが選手会ときっちり話をまとめていなかったための失態である。スモール副社長から「NPBと選手会の問題ではないか。しっかりと解決してほしい」とトラブルの核心を突いた言葉もあった。
NPBは島田社長に一任の措置をとったのだが、駐米大使の経歴を持つ加藤良三コミッショナーはここでも先頭に立たないのは不思議としかいいようがない。お膳立てしてもらい、最後に出ていこうというのだろうか。
室伏の処分は日本の五輪誘致にもマイナス
国際舞台での交渉などを見ると日本はからきし弱い。スポーツ界も同様らしい。ロンドン五輪の終盤、耳を疑いたくなる出来事があった。IOC(国際オリンピック委員会)の選手委員に立候補したハンマー投げの室伏広治選手が候補取り下げの処分を受けたのだ。理由は「選挙活動違反」。
違反行為とは、1) 選手村のダイニングホールで選挙活動 2)iPadで候補者の写真を見せて活動 3)ダイニングルームで広告販促物を配った――などの疑い。日本は取り下げの理由説明を求めているが、クリーンなイメージの室伏選手、さらに日本のやり方を諸外国がどう見ているか。日本は五輪の東京開催を目指している。今回の件がマイナスに働くことは間違いない。
このように日本は競技で戦うことは評価されているのだが、ひとたび背広組が動くとおかしなことになる。WBCも五輪も問題が表面化してしまうと、収拾と解決が難しくなるし、後遺症も心配される。WBC不参加となれば、野球人気に影響するだろう。サッカーに全国の耳目が集まっている今、野球界は考えた方がいい。
(スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)