国際基準金利LIBORの不正操作 日本の銀行の関与も取沙汰される

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   国際的な基準金利「ロンドン銀行間取引金利(LIBOR、ライボー)」の不正操作で、世界の金融界が大騒ぎになっている。LIBORは企業向け融資などの金利の算出基準として、世界中で使われている指標。

   国際的な大手銀行の結託、英金融当局の関与などの情報も駆け巡り、金融界の利益至上主義の体質が浮き彫りにされている。ここにきて邦銀の関与も取沙汰され、日本も「対岸の火事」では済まない雲行きだ。

1本8万円もする高級シャンパンを飲むことを約束

   LIBORは世界の金融市場の中心の一つであるロンドン市場で、世界の有力銀行が互いに資金を貸し借りする際の金利。業界団体の英国銀行協会が、取引の実績でなく、銀行が「お金を借りるのに何%の金利を払うか」を自己申告したものを集計し、毎日算出している。ドルや円など10種類の通貨が対象。いわば、世界の基準金利といえるもので、日本の住宅ローン金利にも影響するだけに、他人事と考えるわけにはいかないのだ。

   問題の発端は6月27日、米英の金融監督機関が、英金融大手のバークレイズに史上最大の2億9000万ポンド(約360億円)の罰金を科したこと。その後、次々と新事実が明らかになるのだが、バークレイズの不正を整理すると、金融危機のリーマン・ショックをはさんで2段階に分かれる。

   まず2005~08年にかけて、実態より高い金利を英国銀行協会に報告しLIBORを高めに誘導し、市場の取引で利益を上げていた疑惑。

   バークレイズのトレーダーが不正操作に加担した担当者に「今度、会ったとき、君と祝杯をあげよう」と1本8万円もする高級シャンパンを飲むことを約束するメールを送ったことも暴露されている。2008年のリーマン・ショックを頂点とする世界金融不安の元になったサブプライムローンの貸し込み、それを証券化したデリバティブを売りさばいて暴利をむさぼった金融機関の体質を改めて示した。

2008年秋には一転、申告する金利を故意に引き下げ

   そしてリーマン・ ショックが起きた2008年秋には一転、申告する金利を故意に引き下げ、財務体質を健全に見せかけ、「国有化の危機」(ダイヤモンド前最高経営責任者=CEO)を乗り切った。そして、これには当局、具体的には英中央銀行のイングランド銀行幹部の関与疑惑もある。信用度が低い金融機関がお金を借りる場合は、金利は高くなる理屈だが、リーマン・ショック当時、金融界は極めて深刻な危機に陥っていて、経営に不安がある金融機関が市場からお金を調達できなくなり、資金繰りが行き詰まる心配があった。そこで、イングランド銀のタッカー副総裁がバークレイズに、LIBORのために申告する金利を低めに申告するよう誘導したといわれる。

   タッカー氏は疑惑を否定しているが、「金融危機を乗り切るために、当局と金融機関に『暗黙の了解』があっても不思議はなかった」と指摘する関係者もいる。正直に高い金利を申告して「危ない」と市場に評価される銀行が続出すれば、金融パニックに陥る懸念があったのは確かだ。

   ただ、LIBORは仕組みとして、1行では操作に限界がある。ドルの場合で18行が申告し、金利が高いもの、低いもの各4行分を除いた10行の平均値を出しているので、バークレイズだけが極端に高く(低く)誘導しようとしても、できるとは限らない。そこで、欧米の金融当局は、多数の金融機関が関与した可能性が高いと見て調査を続けている。バークレイズのダイヤモンドCEOが辞任したが、どこまで疑惑が広がり、辞任ドミノが起きるか、関係者は注視している。

欧米では金融機関への規制論議か本格化

   当初、日本の大手行がLIBORの不正に関与したとの見方は少なかったが、8月に入って三菱UFJ銀行の欧州本部(ロンドン)の行員が英金融当局の調査を受けていることが発覚し、日本の金融関係者に衝撃が走った。これまで、同行の外国人行員2人が、同行に移る前のオランダの銀行勤務時代に不正に関与した疑いで自宅待機になっていたが、今回は三菱UFJ現役行員の疑惑。この行員は外国人男性で、英銀行協会に円建ての金利を申告する担当者という。

   邦銀の関与の有無、その度合いは別にしても、世界的に金融界の不安定な状況が続けば、日本だけ安泰ではいられない。今後、欧米では金融機関への規制論議か本格化する見通しで、邦銀も影響を免れない。

   今のところ、リーマン・ショックのような世界的な金融不安の再来を予想する向きは少ないが、ただでさえ、欧州債務危機などで欧州経済が傷んでいるところで、大手行などの信認が揺らげば、一段と円高が加速する恐れもある。秋に向け、世界経済に危機の火種がくすぶり続けることになりそうだ。

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