クマの目撃件数が東北を中心に急増している。青森や岩手、福島など、昨年の3~5倍に達しているところもあるという。農作業中の男性が襲われてけがをした例のほか、秋田で地鶏が被害にあったり、農作物が食い荒らされたりする食害が頻発、授業中の小学校敷地内に侵入したケースもある。
理由はよくわからないが、環境省などは夏から秋にかけて、さらに増える可能性もあるとみて、警戒している。
小学校にも現れる
4月末以降の主な被害を並べると――
▽岩手県宮古市では4月28日朝、畑仕事をしていた男性(56)が頭や足をかまれ重傷。
▽青森県弘前市で6月14日早朝、タケノコ採り中の男性(70)が子連れのクマに顔などをひっかかれ、軽傷。
▽山形県戸沢村で6月25日正午前、村立戸沢小の敷地に体長約120センチのツキノワグマとみられる1頭が侵入、職員の車のボンネットに飛び乗りミラーを壊し、山林の方向に走り去った。
▽秋田県大館市比内町の養鶏場で、7月の計5日間、鶏舎内の比内地鶏のひな計約250羽が死んでいるのが見つかり、壁や近くの地面にクマの足跡があり、クマに襲われたとみられる。
▽青森県むつ市で7月23日午後2時10分ごろ、民家の敷地内に体長約80センチのクマが侵入し、スグリの実を食い荒らし、約10分後に近くの山へ逃げて行った。
▽山形県尾花沢市で特産の尾花沢スイカのクマによる食害が7月23日時点で8件・260個(前年同期は5件・108個)に急増。
これからもっと増えそう
各県警などのまとめによると、5、6月の2カ月間に、クマの目撃件数(主に人里)が多かったのは、宮城243件(前年同期64件)、秋田154件(同133件)、山形144件(同43件)、福島132件(同33件)など、東北では前年同期比で3倍以上になった県が多い。北関東でも、前年ゼロだった栃木で14件目撃されている。
環境省の調査でも、4、5月の目撃件数は岩手324件(同60件)、宮城105件(同33件)、福島64件(同15件)青森31件(同7件)など、4~5倍に増え、東北6県の合計は628件と前年の3.3倍という。
クマは通常、冬の冬眠を終えて春先から活動。本州に生息するのはツキノワグマで、環境省などによると、本来は臆病な動物だが、急に人が出くわすと、暴れる可能性もあるという。同省の担当者は「人里まで下りるのは周囲にエサが少ないことが影響しているのでは」と推測する。昨冬の大雪で、山菜の生育が遅れたとの指摘もある。
クマの目撃が多いのは、例年は冬眠に向け体を太らせる夏の終わりから秋にかけてで、5、6月に急増するのは異例。このため、8月から秋以降、どれだけクマが出没するか、関係者は今からやきもきしている。