「たまたまなのか、発生度が高い年度初めだからなのか」
長野県内では、東御市だけが青少年健全育成条例を施行している。教え子へのわいせつ行為で2012年3、4月に相次いで逮捕された中学校と高校の教師は、この条例を適用して逮捕された。
ところが、8月に免職になった前出の教師2人は、まだ逮捕されていない。県教委の教育総務課によると、もし県条例があれば2人の行為は抵触する可能性が強いが、条例がないこともあるらしい。このため、逮捕されれば実名が出るはずなのに、2人の場合は県教委の処分で匿名扱いになってしまった。
報道によると、2人のうち小学校の教師は、親告罪の強制わいせつに当たるというが、被害児童の親が「子どもを守るため特定されたくない」と警察ざたになるのを望まなかったという。いわば、この教師は、子どもを人質に取られている親の弱みのおかげで、告訴を免れた形になったわけだ。
とはいえ、今回の不祥事続発で、警察から動きが出てきた。
県議会の6月定例会で、県警の佐々木真郎本部長が、条例がなかったため摘発できなかった事例を挙げ、「条例の制定は必要だ」と訴えた。これに対し、阿部守一知事は、「広く意見を聞き、対応を決めていきたい」と答弁で明言を避けている。
警察が相次いで教員を逮捕したことについて、ネット上では、こうした背景もあるのではとのうがった見方が出た。児童らの性被害に詳しい奥村徹弁護士も、「青少年条例の制定への圧力か・・・」とツイッターでつぶやいている。
教員のわいせつ行為続発について、県教委の教育総務課では、こう説明する。
「たまたまなのか、発生度が高い年度初めだからなのか、などを含めて、判断しかねています。処分は、県の指針や過去の例をもとに厳正に決めており、甘すぎたことはないと考えています。一部に青少年条例がないからという議論があるのは確かですが、そのことについては何とも申し上げられません」