「いつまでも甘えていては…」 被災者も支援活動に参加【岩手・花巻発】

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混成チームの演奏に合わせて懐かしい歌を合唱する被災者の皆さん=大槌町小鎚第6仮設団地で
混成チームの演奏に合わせて懐かしい歌を合唱する被災者の皆さん
=大槌町小鎚第6仮設団地で

(ゆいっこ花巻;増子義久)

   「ひとつにまとまるって素晴らしい。それを音楽が優しく包み込んでくれる」―1日、大槌町小鎚第6仮設団地の談話室に明るい歌声と会話がはじけた。この日の「ゆいっこお茶っこ」カーによる炊き出しボランティアのメンバーは総勢10人で、うちスタッフを除いた4人が花巻市内へ避難している被災者。さらに特別出演した釜石市内の音楽ボランティアグループ「アイビーの会」のメンバー5人のうち2人も被災者という「混成チ-ム」。


   アコーディオン担当の小松勝さん(69)は20代の時、東京の歌声喫茶で演奏を任せられたベテラン。「震災で大槌の家も何もかも失った。幸い、20年近く弾きつづけたアコーディオンの腕だけは残ってくれた」と小松さん。同じ大槌町で母親を失ったギター担当の金崎昭文さん(70)とは古くからの音楽仲間。「震災を経験して、音楽の力のすごさを改めて感じた」と2人は口をそろえた。


   「被災者と支援者の垣根を越えよう」とゆいっこ花巻では支援活動への参加を被災者に働きかけてきた。「いつまでも甘えていては…」と参加者も次第に増えてきた。この日の献立は夏バテ防止の梅ごはんや野菜たっぷりの煮つけなど。「そろそろ、お汁を暖めなくちゃ…」。佐々木好子さん(67)のテキパキした指示が飛んだ。釜石市鵜住居町で被災した佐々木さんは現在、花巻市内の雇用促進住宅で独り住まい。「ゆいっこお茶っこ」カーの常連で今では指揮官として欠かせない存在だ。「被災者の立場で支援にも関わってみたい。そのことがとっても大切なことのように思う」と佐々木さん。


   この日の参加者は近隣の仮設入居者を含めて約30人。黒沢ウタ子さん(83)は富士登山をした後、昨夜の夜行バスで一睡もしないで戻ってきた。「アイビーの会とゆいっこさんが来てくれると聞いたので…。分け隔てのないこの雰囲気が大好き。被災者とか支援者とかではなく、みんなひとつになって一緒に歌を歌う。そこから未来への希望が生まれるような気がするの」と黒沢さんは声をからした。


   「今日も30度以上の真夏日。仮設との間をピストン輸送しますので、遠慮なく声を掛けてください」。小田島政弘さん(62)はお年寄りの送り迎えをしながら、玉のような汗をぬぐった。「ゆいっこお茶っこ」カーの専属運転手を買って出た小田島さんも大槌町で被災し、今は花巻市内の「みなし仮設」で暮らしている。震災2年目を迎え、被災地には新しい支え合いの形が少しずつ定着しつつあるようだ。


談話室の片隅ではこちらもスタッフと被災者の「混成チーム」が炊き出しの盛り付けに大わらわ=小鎚第6団地の談話室で
談話室の片隅ではこちらもスタッフと被災者の「混成チーム」が
炊き出しの盛り付けに大わらわ=小鎚第6団地の談話室で
被災者と支援者・スタッフの歌声がひとつになって談話室にこだました=小鎚第6仮設団地の談話室で
被災者と支援者・スタッフの歌声がひとつになって談話室にこだました
=小鎚第6仮設団地の談話室で

ゆいっこ
ゆいっこネットワークは民間有志による復興支援団体です。被災地の方を受け入れる内陸部の後方支援グループとして、救援物資提供やボランティア団体のコーディネート、内陸避難者の方のフォロー、被災地でのボランティア活動、復興会議の支援など、行政を補完する役割を担っております。
ゆいっこは、「花巻」「盛岡」「北上」「横浜」「大槌」の各拠点が独立した団体として運営しておりますが、各拠点の連携はネットワークとして活用しております。
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