風化する記憶 消滅した集落を写真で振り返る【福島・いわき発】

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   パソコンに取り込んだ写真が増えたので、ときどき整理する。2007年11からほぼ1年間、撮影したものを集約したフォルダがある。ふだんは忘れている。こちらもたまに開いてデータを整理しないといけない。


   ハッピーマンデー制度によって7月第三月曜日が「海の日」に定まった。人によっては3連休になる。2008年の海の日(7月21日)、塩屋埼灯台を訪ねた。灯台のてっぺんから北側の薄磯(=写真)を、南側の豊間を撮影した。データを整理していて、そのことを思い出した。しばし見入った。


   薄磯は、いわき市内では勿来に次いで海水浴客がやって来るところ。海岸に海の家が4棟建っている。海水浴客もいる。なにより住宅が密集している。手前、鉄筋コンクリートの建物は豊間中。やや右手、防波堤のすぐ近くに知り合いの喫茶店がある。


   3・11に、この集落が消滅した。地盤沈下によって砂浜も狭くなった。喫茶店は流され、裏の自宅は1階部分の壁が抜けたものの、かろうじて残った。


   海水浴は今年、勿来だけ解禁になった。それ以外は今年もダメ。灯台へも上がれない。その現実に、4年前の写真が重なる。


   写真を見ながらの感慨。3・11前の薄磯をぼんやりとしか思い出せなくなっていた。目の前の現実に引きずられて、そこに人家が密集し、人間が暮らしていたことを、忘れがちになっていた。記憶じたいが風化する。いや、目の前の現実に代替される。それを補うのが記録、この場合は写真だ。写真があれば、そこへ帰ることができる。


   記録がいかに大事かということだろう。3・11前の薄磯をあらためて胸に刻む。人間の暮らしや息遣いとともに。

(タカじい)



タカじい
「出身は阿武隈高地、入身はいわき市」と思い定めているジャーナリスト。 ケツメイシの「ドライブ」と焼酎の「田苑」を愛し、江戸時代後期の俳諧研究と地ネギ(三春ネギ)のルーツ調べが趣味の団塊男です。週末には夏井川渓谷で家庭菜園と山菜・キノコ採りを楽しんでいます。
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