トヨタ自動車が2011年12月に発売した低燃費、低価格が売りものの新型ハイブリッドカー、「AQUA(アクア)」が、累計15万台を突破し、快調に販売台数を伸ばしている。
日本自動車販売協会連合会(自販連)が2012年8月6日に発表した7月の新車乗用車販売台数ランキングでも、トヨタのHV車「プリウス」に次ぐ第2位で、2万6274台を売った。
月間販売目標の2倍売れる
トヨタは首位の「プリウス」が3万3398台で11年6月から14か月連続でトップに君臨する。プリウスは5月から、ワゴン型の「プリウスα」を新たに投入。これが1万1690台と35%を占めたのが、販売台数を押し上げた要因だ。
第2位もトヨタの「アクア」が4か月連続でキープ。第3位にはホンダの「フィット」が2万4153台で続いた。
トヨタのアクアは、1リットルあたり35.4キロメートル(JC08モード)の低燃費と、169万円からの低価格を兼ね備えたHV車として売り出した。販売目標を月1万2000台と同社としては高めに置いていたが、これを早々と突破、目標の約2倍も売れている。いま注文しても、納期までは約4か月待ちになるほどの人気だ。
「アクアは、次の10年を見据えたコンパクトカー」とトヨタが言うだけあって、宣伝活動にも新たな手法を試みた。発売当初こそマスメディアを使ってPRしたが、中長期的な視点から「アクア」ブランドの育成にも力を注いだ。
もともとアクアは、クルマ離れがいわれる若者層を念頭に置いたHV車で、そのために価格も下げた。
トヨタ車の広告・宣伝を手がけるトヨタマーケティングジャパンは、「アクア」にちなみ、地域の水周りの環境保全などを支援することにした。最近の若者がさまざまな地域貢献活動やボランティア活動に積極的に参加していることに着目した企画だ。
同社マーケティング局は、「アクアが発信するコンセプトのとおり、『次の10年を見据えた』取り組みを、地域と企業、参加者が一緒に行うことで若者の共感を呼びブランドイメージを形成できるのではないかと考えた」と説明する。
フェイスブックなど「口コミ」で広がる
「AQUA SOCIAL FES!!」と銘打った、このアクションプログラムは2012年3月から、全国各地の地元メディアやNPO団体と連携して50か所を巡っている。「あしたの『いいね!』をつくるFES」が合言葉だ。
たとえば、東京湾のお台場海浜公園で海づくりについて学びながらアマモ場の育成活動を手伝う、素足で走れる海岸をつくるため三重県の町屋海岸の清掃とゴミの分別作業を行う、といった具合だ。島根県の清流・高津川では川の清掃をしたり、高津川で育った川ガニ鍋を食べたりする「高津川教室」を開催。地域貢献とともに参加者が楽しめる活動を目指している。
当初、延べ1万人の参加者を目標にしていたが、すでに7000人超が参加。ホームページを使って参加者を募っているが、実際に参加した人がフェイスブックなどで活動の様子を報告したり、次回の参加を呼びかけたりと「口コミ」で広がり、リピーターも少なくない。地域やNPO団体に加え、企業が支援していることに興味を持って参加する人もいるようだ。
トヨタマーケティングジャパンによると、参加者の約6割が30歳代以下。「応募人数を上回り、参加者を抽選で決めるケースも少なくない」そうだ。シルバー世代もいれば、子ども連れのファミリー世代の姿も見られるという。
「クルマに興味がある人ばかりが集まってくるわけではありませんが、活動を通じてFESに共感し、それをきっかけにクルマにも興味を持ってもらえればいい」