新聞社説は「増税優先」で一致
この一連の動きにあたふたしたのは、「野党」である自民だ。もともと野党は解散総選挙を求めるものだ。しかし、増税をしたい自民は3党合意を優先し、消費税増税法案を先行させてきた。それが、自公を除く野党の内閣不信任案提出と党内若手からの3党合意破棄の動きから、「会期内解散を確約せよ、さもなくば内閣不信任案・問責を提出する」との強硬姿勢になった。
本稿締め切り(8日午前)の段階では、民主は、自公との国対委員長会談で、「消費税増税法案が成立した暁には、近い将来、信を問う」という野田首相の考えを伝え、3党の党首会談の開催も要請した。ただし、自民はこの回答に満足せず、再回答を要求している。
民主にもマニフェスト違反という致命的なミスがあったが、自民も3党合意を優先したのは痛い。これで解散となっても、民、自、公は消費税増税で同じだ。「近い将来、信を問う」というが、「近い将来、3党連立で信を問う」と悪い冗談ではないか。
今回の消費税増税の仕掛け人である財務省なら、どのような手で収めるか。それは、消費税増税の成立と引換に野田首相が退く野田花道論だろう。これは野田首相以外の民主にとっては好都合だ。自民も解散ではないが許容範囲だろう。何より財務省にとっては首相は誰でもよく、消費税増税が成立するのであればいい。こう考えると、新聞各紙の社説が消費税増税を優先せよとの一致しているのは妙に不思議なのである。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2005年から総務大臣補佐官、06年からは内閣参事官(総理補佐官補)も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「財投改革の経済学」(東洋経済新報社)、「さらば財務省!」(講談社)など。