夏場の円高を見越す投資家もいる
経済状況とともに、夏場に円高方向へと振れやすい理由には、機関投資家など市場関係者が夏休みを取って取引量が減少し、少ない売買で大きく値が動くこともある。短期的な値動きでもうける投機筋が、円買いを仕掛ければ普段よりも簡単に円高になってしまう。
こうした思惑から「夏場の円高を見越して仕込んだ投資家もいる」(市場筋)といわれるが、実際に円高が進むかは微妙、と見る向きも結構多い。
市場関係者が注目したFRBの1日の連邦公開市場委員会(FOMC)は、追加の金融緩和が見送られた。2日の欧州中央銀行(ECB)理事会では、スペインの国債購入再開を打ち出した。最近はひところに比べるとユーロ高になっているが、欧州債務危機が解決に向かうとみる関係者は少なく、ユーロ安が続く可能性は高い。
欧米の金融政策によっては急激な円高が進み、輸出関連企業の収益圧迫など景気への悪影響が広がれば、日銀は8、9日の金融政策決定会合で追加の金融緩和に追い込まれる――これが、「円高の夏」第1幕のシナリオだったが、FRB緩和見送りなどで、一部の市場関係者の「期待」はひとまず裏切られた形で、日銀が当面、金融政策をいじるとの見方はほぼ消滅した。
もちろん、「米国の景気状況は予断を許さず、秋になって「FRBが9月12、13日の次回FOMCで量的緩和第3弾(QE3)に踏み切る確率はかなり高い」(金融筋)としても、「夏の円高」は遠のいたとの見方が徐々に広がっている。