松井秀喜が自ら「自由の身」になることを選んだ。2012年8月1日、レイズの管理下から離れ、まだ大リーガーへのチャンスを待つというのである。獲得する球団なし、との見方が圧倒的だが、ヤンキース復帰があるかもしれない。
マイナー、独立L、日本復帰を見送った心中は?
「自由契約選手にしてほしい」と松井。レイズは「分かった」と受け入れた。3日までに獲得するチームがなければ自動的に自由契約になるのだが、それを待たずに松井は決意したことになる。獲得ゼロとなって恥をかくのはプライドが許さなかったのかもしれない。
レイズから「戦力外」(7月25日)を通告された後、松井には選択肢がいくつかあった。マイナー契約、独立リーグ入り、日本球界への復帰などである。ヤンキースで活躍したゴジラ松井の名前は全国に知られており、独立リーグなら「客を呼べるタレント」となる。
日本復帰も取り沙汰された。古巣の巨人は無視したものの、複数球団が獲得の打診をしたといわれている。しかし、松井は「まだメジャーでプレーしたい」旨を伝えたそうである。日本復帰の道は7月31日の補強期間終了で消えた。
確かに、現在の松井では、まともな契約を結ぶ大リーグ球団はない。レイズでは打率1割4分7厘、2本塁打、7打点と売り物のバッティングもお粗末である。そんな状態にも関わらず「行き先は自分で探す」と先手を打ったのは、まだやれる自信があるからなのだろう。
8月31日までに契約すれば、「ポストシーズン要員」になりえる
おそらく松井をウォッチしている球団はある。シーズンが後半に入り、この8月の戦いは最重要。優勝の可能性があるチームは9月からの決戦に備え、戦力に厚みを加えておきたい。故障者が出ればたちまち影響が出る。
松井の強みは「大舞台に強い」ことと「短期爆発型」であることだ。それはヤンキース時代に実証済みで、なにしろ09年のワールドシリーズで打率6割1分9厘、3本塁打、8打点と打ちまくり、MVPに輝いている。この実績は魅力である。パートタイマーとしてはかなり評価されるだろう。
大リーグでは8月31日までに契約しないと、ワールドシリーズなどポストシーズンの試合に出場できない。9月1日からベンチ入りが25人から40人に広がる。つまり松井を8月中に獲得しておけば、いつでも起用できるわけで、ペナントレースの終盤で松井の勝負強さを生かせることができる。
その松井の力をもっとも知っているのはヤンキースである。ヤンキースは首位を走っているものの、ワールドシリーズまで行き着くかは疑問符が付く。決して豊かな戦力ではないからだ。3年前のワールドシリーズでの松井の働きをニューヨークのファンは覚えている。ワールドシリーズ制覇の至上命令を背負っているだけに、ヤンキースが松井獲得に動く可能性はある。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)