ロンドンオリンピックでは2012年8月4日、日本男子サッカーが強豪エジプトを3-0で下し、メキシコ五輪以来44年ぶりとなるベスト4進出を決めた。先制点を挙げた俊足の永井謙佑選手や、チームの主将を務めるオーバーエイジ枠の吉田麻也選手など選手陣に視線が集まるが、チームを率いる関塚隆監督(51)については、サッカーファン以外にはなじみが薄いようだ。
スーツのよく似合う「ウチの会社の課長にもいるよね」タイプの関塚監督は、一体どのような人物なのか。
一浪・一般で早稲田入学の「岡ちゃん2世」
千葉県出身の関塚監督は「市立船橋」「習志野」と並ぶサッカー名門校の一つ、八千代高等学校の出身だ。1年間の浪人生活を経て、早稲田大学教育学部に進学。同大のサッカー部(ア式蹴球部)で日々汗を流し、本田技研工業での活躍後、指導者へ転身し、早大ア式蹴球部監督としてマネジメントの道をスタートさせた。鹿島アントラーズのコーチや川崎フロンターレの監督も務め、2010年からUー23の監督に。
早大ア式蹴球部といえば、「Jリーグ」を誕生させた川淵三郎氏や、1968年メキシコ五輪で得点王に輝いた釜本邦茂氏など、サッカー界に名を残す逸材を輩出してきた名門だ。日本を初のW杯出場へと導き、南アフリカW杯出場も決めた、あの「岡ちゃん」こと岡田武史監督も関塚監督の先輩にあたる。現役引退後、再び指導者として脚光を浴びている岡田監督も、実は関塚監督と同じ一浪・一般入試組であり、関塚監督はいわば「岡ちゃん二世」なのだ。
試合後の会見などテレビに映る際のポーカーフェイスが印象的だが、今年5月の早大ア式蹴球部公式サイトの「独占インタビュー」では、「いつも穏やかなトーンでお話しされているという印象があるんですが」という問いかけに、「いや熱いですよ(笑)」と話し、熱いところが出にくいクールな選手には自分自身が熱くなって表現する、と、普段の印象とは異なる一面も垣間見せていた。
「メダルつかみたい」
エジプト戦の前に「五輪で日本の男子サッカーが注目されることはなかったので、勝つことでそれを変えていきたい」とコメントしていた関塚監督。エジプト戦を勝利で飾ると、「本当にチームで勝ち取った試合だったと思います。選手たちがよくやってくれました」と冷静さを保ちつつも満足げに振り返り、「1試合ずつ力をつけてきたので、メダルをつかみたい」と意気込みを語った。
日本は8月7日にイングランドサッカーの聖地である「ウェンブリー・スタジアム」でメキシコと対戦する。この試合に勝利すると、ブラジル対韓国の勝者と金メダル獲得を争うこととなる。
大会前には、早大ア式蹴球部の大先輩・釜本邦茂氏に「なでしこはメダルを取ってくるが、男子はメダル取れない」と言われてしまった関塚ジャパンだが、いい意味で期待を裏切る大活躍。サッカーファンはもちろん、早大OB一同も目が離せないだろう。