太陽光や風力などの再生可能エネルギーでつくった電気を固定価格で全量買い取る制度(FIT)による国民負担が5年後の2017年には年間約1兆2000億円になるとの試算を電力中央研究所の研究者がまとめた。
電力会社が買い取り価格の変更がないとの前提だが、初年度にあたる2012年度の4.6倍に膨れ上がることになる。
国民負担、5年後には「月額400円」上昇か
電気中央研究所の主任研究員、朝野賢司氏によると、1キロワット時(kWh)あたり太陽光発電の買い取り価格を現行の42円、風力発電が23.1円(20kW以上)、水力発電25.2円(1000kW~3万kW以上)などの再生可能エネルギー全体を合算して算出した場合、2012年度の電力会社の買い取り総額を資源エネルギー庁は、50億5000万kWh、2600億円と見込んでいる。
買い取り対象となる再生可能エネルギーの発電量の内訳は、太陽光発電が37億kWh、風力が7億kWh、水力1億5000万kWh、バイオマス5億kWhになる。地熱発電はゼロだ。
朝野氏はこれをベースに、7月に国際エネルギー機関(IEA)が出した再生可能エネルギーの普及状況の予測値をもとに、買い取り価格の変更がないと仮定して試算したところ、2015年には累計総額で1兆2600億円、17年には3兆300億円になると予測した。
17年度には累計で、太陽光発電が258億kWhと約7倍にも発電量を増やし、風力が64億kWh、水力16億5700万kWh、バイオマス105億kWh、地熱も13億kWhに「成長」するとみている。
それに伴い、7月1日から始まった固定価格買い取り制度により、8月分の電気料金から一般家庭の場合で、12年度は月額平均で87円が上乗せされる。それが2017年には約400円まで上昇する見通しだ。
朝野氏は「買い取り価格は原則1年ごとに見直されることになっていますが、附則で施行後3年間は変更しなくてもかまわないようになっていますから、少なくとも3年間は変更されないでしょう。国民負担を減らすには、この買い取り価格を下げるしかないのに、です」と説明する。