ANAとの「主幹事掛け持ち」に不快感
稲盛氏が一番語気を強めたのが、ANAが7月3日の発表した最大2110億円の公募増資だ。記者から、
「IPOを目前に控えた航空会社としては、資金を先取りされた格好だが」
と水を向けられると、
「(再上場に向けた)主幹事証券として野村(証券)さんと大和さんを(JALに3500億円を出資している企業再生支援)機構の方でお決めになって、しょっちゅう機構とJALの経営陣とで打ち合わせをしていた。そこには、野村のトップの方もナンバー2の方もしょちゅう、いつも見えて(来て)いたので、我々も主幹事としてやっていただけると思っていましたので、まさか全日空さんが、突然、ああいう大型の増資をするとは思っておらず、びっくりした」
と述べた。実は野村証券はANAの増資の主幹事証券でもある。競合他社と主幹事証券を「掛け持ち」されたことに不快感を示した形だ。
さらに、
「3500億円を(機構が)回収するための上場というのは、やはり、国から出していただいたお金を、瑕疵(かし)のないような状態でお返しするということが一番の命題だったので、もしそういうこと(再上場)を妨害するためにされたという風に(理解)するならば、大変問題だと思うが、まさか、そういう意図ではなかったと思う。資金の需要の見通しがあって、ああいうことを突然されたのだと思うが、大変私たちは、びっくりし、戸惑っている」
と、ANAに対する怒りは収まらない様子だ。
この日の会見では、13年3月期第一四半期(12年4月1日~6月30日)の連結業績も発表された。売上高は前年同期比12.5%増の2867億円、営業利益は同83.1%増の314億円、最終利益は同111.2%増の269億円だった。旅客需要が堅調で、営業利益は四半期ベースとしては過去最高水準を記録した。12年5月に発表した「売上高1兆2200億円、営業利益1500億円、最終利益1300億円と減益予想」との13年3月期の業績予想は、そのまま据え置いた。