中国は金銀独占ねらい、韓国は世界一との対戦避けるため?
五輪精神に反したふるまいの代償は大きかった。世界バドミントン連盟(BWF)は8月1日、無気力試合を行ったとして韓国の2ペア、中国ペア、インドネシアペアの計4組を失格処分にしたと発表したのだ。
なぜそこまでして負けたかったのか。どうやら決勝トーナメントでの組み合わせに解がありそうだ。王・于ペアは、グループ2位通過なら、決勝トーナメントに勝ち上がったもうひとつの中国ペアと別のブロックに入り、決勝まで当たらない。「中国が金、銀独占」というシナリオが現実味を帯びてくる。一方の鄭・金ハナペアはこの試合に勝つと、この後に行われる河―金ミン貞ペアがインドネシアペアに敗れた場合、トーナメント1回戦で「直接対決」となってしまう。だが両ペアとも負けてしまえば、最悪の事態が避けられるというわけだ。
中国の王・于ペアはシナリオ通りに敗れたが、韓国の鄭・金ハナペアは勝ってしまった。このため、続く韓国ペア―インドネシアペアの勝者が、改めて「世界一」の王・于ペアと戦うことに。そこでインドネシアペアはもちろん、河―金ミン貞ペアも、たとえ自国ペアが相手になったとしても「世界一」ペアとの実力勝負は避けたいと判断し、負けようとしたのではないかと推測できる。
BWFの処分を中国は受け入れたが、韓国とインドネシアは抗議した。だが、後にインドネシアは取り下げ、さらにBWFは韓国の抗議を退けたという。中国の于洋選手は8月2日、中国版ツイッター「微博」で競技から引退する書き込みをしたと報じられた。
これで世界ランク1位、3位、8位が五輪の舞台から姿を消し、代わって予選で敗退していた4組が決勝トーナメントに進出することになった。一方、日本の藤井瑞希選手・垣岩令佳選手ペアはトーナメント1回戦でデンマークのペアと対戦した。「無気力」とはほど遠いはつらつとしたプレーでコート狭しと動き回り、長いラリーも制して快勝、4強入りした。失格処分が出ていなければ準決勝は世界1位の王・于ペアと対戦する可能性があったが、実際には繰り上がりで出場するカナダペアと当たることになった。