1回目の抗議には300ドル、2回目は500ドル
案の定、一部の外国人は「日本は最低だ」「採点が気に入らなかったら審判にカネを渡すのか」など、日本チームを中傷する英文の書き込みを残した。
実際は買収でも何でもない。国際体操連盟(FIG)は、体操競技の国際大会における運営規則を定めている。第8条が「採点」に関する内容で、その4項が「採点への審理請求」に当てられている。
採点への抗議は「Dスコア」に限って認められており、まずは口頭で行うことが条件だ。タイムリミットは「得点が出た後、すぐ。遅くとも次の競技者や団体が演技を終える前」で、最終演技者の採点に関する抗議については「点数がスコアボードに表示されてから1分以内」となっている。日本のコーチ2人が急いで審判員席に向かったのは、内村選手が日本チーム最後の演者だったためだろう。制限時間外の請求は認められない。
口頭で抗議した後、今度は4分以内に書面の提出が求められる。これで正式な手続きが完了するわけだ。規定では書面のほかに必要なものとして、
「1回目の抗議には300ドル、2回目は500ドル、3回目は1000ドルの支払いが必要となる」
と書かれていた。米メディアの掲載写真で、日本人コーチが握りしめていた米ドル札は、FIGが定めた「抗議手数料」だったとみられる。抗議内容が受け入れられた場合は返金される決まりのため、今回の日本側の支払いも戻されたはずだ。
米ヤフーの記事でも、本文ではFIGの規定にのっとった手数料だったと説明しているが、見出しと写真だけを見る限りでは日本側が不可解な行動をとったように読める。米紙「USAトゥデー」のブログでも、見出しが「日本男子体操チームが審判に現金授与」との表現だ。正当な手続きを踏んだ日本チームにとっては、とんだ誤解を生むワンシーンが切り取られてしまった。