闘争心むき出しの「野性児」「暗殺者」 柔道金メダルの松本、海外でも好感度アップ

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   ロンドン五輪の柔道女子57キロ級で、日本の金メダル第1号となった松本薫選手。その強さだけでなく、試合前の「気合」にも話題が集まっている。

   射抜くような鋭い視線は勝負師の気迫があふれ、見ていて怖いほどだ。かつて海外メディアから驚くような「あだ名」までつけられたようだが、五輪を見た外国人からは松本選手を絶賛する感想が多い。

「ひどいですねえ」と声を出して大笑い

   テレビカメラが、出番を待つ松本選手を映しだす。ややうつむき気味で、にらみつけるように前だけを見つめる。体を左右に揺らして腕や首を回し、時折見せる歯をむき出すようなしぐさは、まるでネコが相手を威嚇しているみたいだ。畳に向かって歩き出すと眼光は鋭さを増し、自分に言い聞かせるように何かブツブツとつぶやいていた。

   松本選手は、国際柔道連盟が定める女子57キロ級のランキングで1位。英国時間2012年7月30日に行われた試合でも順当に勝ち進んだが、どの試合でも入場前には、気合のこもった「戦闘モード」の顔だ。試合中も、「待て」がかかるとすぐに定位置に戻って、すぐさま相手に飛びかからんばかりの姿勢に入る。対戦相手が疲労困憊で立ち上がれないときすら、平気な顔をしている。勝利を収めると小走りに退場。畳の上での振る舞いは、他の選手とひと味違っていた。

   そして決勝。延長の末の勝利で金メダルが確定し、勝ち名乗りを受けた後でようやく「鬼の形相」が和らいだ。コーチのもとに走り寄り、大粒の涙を流す。写真撮影には一転、この日初めて見せた満面の笑顔で臨んでいた。

   「オオカミ」「肉食系女子」「野獣のような鋭い眼光」――。7月31日付の五輪関連のニュースでは、松本選手をこう報じた。24歳の女性に対しては強烈な表現にも映るが、柔道女子の園田隆二監督も「野性児」と呼ぶほど、闘争心がにじみ出ている。過去に行われた柔道の大会の映像では、今回の五輪と同じように出番直前は必ず気迫のこもった表情が映っていた。2009年の世界選手権では、右手を骨折しながら試合を続行したほど勝利へのこだわりは強い。

   だが畳を下りれば一転、愛嬌たっぷりだ。五輪の優勝インタビューで、「試合に集中していたようですが、その力はどこからわいてくるのですか」と「気合の表情」について問われると、「えっ、あの、分からないです」と戸惑った様子。また7月31日放送の日本テレビの情報番組「スッキリ!!」では、五輪開幕の約1か月前に松本選手をインタビューしたときの映像を流した。記者が「2010年の世界選手権で、海外メディアが松本選手を『アサシン』と呼んでいたんですよ」と言うが、本人はピンとこない。そこで続けて「アサシンは『殺し屋』という意味」と明かすと、「ひどいですねえ」と声を出して大笑いしていた。屈託のない笑顔からは、とても「殺し屋」の呼び名はふさわしくない。

「勝利への執念がはっきり分かった」

   大学時代の同級生は「普段の松本選手は、どちらかと言うと天然」と暴露する一方、「練習の様子を見ると『殺し屋』みたいだった」。オンとオフを素早く切り替え、学生の頃からメリハリをつけられる性格だったと考えられる。

   松本選手の金メダルは、海外メディアにも報じられた。「素早くて攻撃的、意志の強さが全試合を通して出ていた」(ロイター通信)などと称賛しているが、試合直前の「気合」についてまで言及しているところはない。一方、ツイッターを見ると外国人の中で松本選手に関する投稿がいくつかあった。「見た目が怖い」(ロンドン在住女性)「モンスターだ」(英国人)という感想もあったが、「勝利への執念がはっきり分かった。感動した」(米国人)「柔道に集中していた」(日本在住の米国人)と、厳しい表情から松本選手の金メダルに対する強い気持ちを感じ取った人もいたようだ。中には、日本に住む英会話講師のこんなツイートもある。

「松本選手、好きになった。彼女のスタイル、不屈の闘志が素晴らしい」

   鬼気迫る表情がきっかけとなって、今後外国人のファンが増えるかもしれない。

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