「日本再生戦略」で再生できるか 20年度に100兆円の市場創出めざす

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   政府の国家戦略会議(議長・野田佳彦首相)が2012年7月11日、2020年度までの成長戦略となる「日本再生戦略」の原案をまとめた。環境や医療・介護など11分野で重点的に取り組む38の施策を掲げ、新たな産業を後押しして2020年度に少なくとも100兆円の新規市場と480万人の雇用創出を目指すというものだ。だが、各府省の縦割りを排して国家戦略会議が司令塔の役割を果たせるかは不透明で、「看板倒れになるのでは」(与党筋)との声も上がっている。

「新成長戦略」を練り直し、分野ごとに中間目標

   民主党政権として2010年6月に策定した「新成長戦略」を練り直したという位置づけ。東日本大震災や円高進行など環境の激変を受けて、経済の空洞化のリスクが一層高まっていると指摘し、「危機を攻めに転じ、新産業を創出する」と宣言。2020年度までの平均で経済成長率を名目3%、実質2%に高める目標はそのままだが、分野ごとに2020年度の目標に加えて2015年度の中間目標を新設したところが新しい。

   分野別の主な内容は、環境関連産業で、新築住宅の省エネ基準の達成率を2010年の42%から100%に引き上げるほか、新車販売に占めるハイブリッ ド車など次世代自動車の割合を同10%程度から50%に引き上げる。省エネ・耐震工事を普及させて中古住宅流通市場の規模を20兆円に倍増させることも盛り込んだ。

   医療・介護分野では、革新的な医薬品の開発や再生医療の実用化などで新たに50兆円規模の市場と284万人の雇用を創出。

   貿易では、日本の貿易に占める経済連携協定(EPA)締結国の割合を、現在の2割弱から2015年度に韓国並みの3割程度、2020年度には8割程度に引き上げるほか、鉄道 や上下水道などインフラの海外輸出で19.7兆円の市場を創出。アニメなど「クール・ジャパン」として海外で人気が高い日本文化の輸出でも、17兆円を目指す。観光分野では、訪日外国人旅行者を2010年の861万人から2500万人に引き上げるとの目標は踏襲した。

   雇用関連では、20~34歳の若者の就業率を2009年比2.4ポイントアップの77%に引き上げ、若者のフリーター数をピークだった2003年の217万人から124万人まで抑える。

国家戦略会議が司令塔の役割を果たせるか

   経済成長と財政健全化を両立するため、消費増税を柱とする税と社会保障の一体改革の着実な実施や、デフレ脱却に向け「日銀に強力な金融緩和を継続するよう期待する」ことも盛り込んだ。

   ただ、過去の戦略や計画もそうだったが、総花的になり、「聞こえのいいスローガンや数値目標ばかりが先に立ち、……政策手段の具体化をほぼ先送りしている」(日経7月12日付社説)など、総じて評判が悪い。しかも、基本的に各省庁の政策を寄せ集める「官庁積み上げ型」(朝日14日付社説)では、実行は覚束ない。

   ある成長期待産業の関係者は「過去の施策も、国の計画→自治体の計画…と下に降りてくるうちに薄まり、難百億円の予算がついても、いつのまにか、どこへともなく消えてしまうことの繰り返しだった」と冷ややかに指摘する。実際、菅内閣の新成長戦略は、各省庁が自ら分析した約370項目のうち「実施され、成果もあった」は1割止まりで、「実施されたが成果が出ていない」が6割に達する。甘いであろう「自己採点」でこうだから、ほとんど実をあげていないことになる。

   こうした体たらくを脱するには、「国家戦略会議が司令塔の役割を果たせるかどうかがカギとなる」(読売13日付社説)との指摘は、多くの識者、マスコミに、ほぼ共通する。

   だが、政治主導を掲げて高支持率を誇った小泉内閣の経済財政諮問会議でさえ、郵政民営化のほかは社会保障などの制度の抜本改革には取り組めなかった。まして、「官僚に完全に取り込まれている」(野党筋)と酷評される野田内閣のこと。小沢新党その他の分裂などで政権基盤が一段と揺らぐ中で、「多くを期待するのは難しい」(民主党議員秘書)との声が与党内からも聞こえるのが実情だ。

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