日本政府観光局がまとめた6月の訪日外国人旅行者数は68万6600人に上り、東日本大震災前の2010年同月比で1.4%増と、単月として初めて震災前水準を上回った。観光庁の井手憲文長官は「震災前を超えるのに1年以上かかり長かった。これでほぼ落ち着いてきたのではないか」述べ、今後のいっそうの改善に期待している。
6月としては過去最高
6月の訪日外国人は前年同月比では58.6%増と大幅に伸び、6月としては過去最多を記録した。国別で目立ったのは、中国が2010年同月比25.0%増の12万9600人、台湾が同10.4%増の12万5700人、タイが同36.5%増の1万3600人など。一方、訪日外国人数として最も多い韓国は同15.1%減の15万2100人で依然不振が続いている。シンガポールも同25.2%減の1万3200人で、フランス(同10.2%減)、ドイツ(同12.3%減)など欧州からの動きも鈍い。
昨年3月に起きた大震災以降、日本を訪れる外国人数は激減。震災直後の昨年4月は前年同月比62.5%減の29万5800人まで落ち込み、12月までは毎月2ケタの減少が続いた。ただ今年に入ると減少幅は縮小し、ほぼ1ケタの減少まで回復していた。
訪日外国人が急減した最大の要因は、言うまでもなく東京電力福島第1原発事故を機に生じた放射能汚染に対する不安だ。放射能への懸念が特に強いのが、韓国やシンガポールで、政府観光局によると「シンガポールでは放射能に不安を感じる子ども連れの家族層を中心に、訪日旅行を手控える傾向が今も続いている」という。また、チェルノブイリ原発事故で大きな影響を受けた欧州諸国でも放射能汚染への懸念は根強いという。こうした状況に加え、最近の円高が訪日外国人の動きをより鈍くしている。
放射線情報をネットで公開
観光庁は現状を打開するため、日本の放射線量の地域別測定値をインターネット上などで紹介し、東京などでは海外の大都市並みの水準であることなどを積極的にPR。7月には東京を1日観光する外国人に放射線測定器を携帯してもらい、1日の放射線量を実測したり、観光中に食べた食事の放射性物質を検査したりするなどの取り組みも実施し、問題ないとの結果を英語や中国語など4カ国語で世界に発信している。こうした地道な取り組みが、ひとまず効果を上げ始めたと言える。
今後の大きな課題は韓国からの旅行客だ。観光庁は「韓国人は日本にとって一番のお得意様で、その落ち込みは厳しい。原発問題に加え、円高・ウオン安も大きく響いている」と分析する。ただ訪日韓国人の減少幅は縮小傾向にあり、6月の2010年同月比15.1%減は5月(同21.9%減)よりは改善している。観光庁などは、格安航空会社(LCC)を活用した韓国との共同キャンペーンなど、韓国人観光客の回復作戦を計画している。