福岡市が「すべての人にやさしいまち」を目指して掲げているキャッチフレーズ「ユニバーサルシティ福岡」をめぐり、映画配給やテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ」の運営を手がける米ユニバーサルグループから「待った」がかかった。
米側は、商標権侵害の可能性を主張する一方、市では「営利目的ではない」などと反論。だが、米側が態度を硬化させてきたこともあって、キャッチフレーズをわずかに変更することになった。
高島市長が主要政策のひとつとして打ち出す
「ユニバーサルシティ福岡」の言葉は、高島宗一郎市長が2011年2月15日の会見で、11年度の事業について説明する中で、
「老若男女、福岡に住んでいる方も、それからよそからいらっしゃった方も、障がいのある方もない方も、海外からいらっしゃった方も日本の方も、どなたでも訪れてみたい、住みたい、遊びに行ってみたい、本当にそう思ってもらえるような福岡にしたい」
などとコンセプトを説明。
高島市長が掲げる政策の目玉のひとつでもあり、11月15日の会見では、サルをモチーフにしたロゴマークも発表された。このロゴマークは職員の名刺にも印刷されており、「市の顔」とも言える存在だ。12年10月には、コンセプトを実現するための取り組みを紹介するイベント「ユニバーサルシティ福岡フェスティバル」も予定されている。
「ユニバーサルシティ福岡」から「ユニバーサル都市・福岡」に
だが、この舞台裏で、思わぬトラブルが起きていた。市がロゴマークの製作を準備していた11年9月、商標登録について調査したところ、「ユニバーサルシティ」という商標登録を米「ユニバーサルシティ・スタジオズ」が持っていることが判明。福岡市では専門家と協議した上で、法的に問題がないと判断したため、11年11月に「商標的な使い方をするものではない」とする使用報告の文書を米側に送った。
ところが、記者発表後の11年末に、米側は「変更してほしい」などと返答してきた。市では12年1月に、
「商標として営利目的で使用するのではなく、施策に関わる文書・資料、事業の広報に使用することから、損害のおそれは考えがたい」
として、「取り組みへの理解をお願いしたい」と、変更を拒否。
これに対して、12年2月になって米側から再び「変更してほしい」との文書が送られてきた。市ではそのまま使用を続けていたところ、12年6月になって再び米側から通知があり、
「福岡市の取り組みは我々の事業と誤認・混同されるおそれがある」
と主張。「損害賠償」「訴訟」といった直接的な表現はなかったものの、これまでよりも強い調子の文章だったという。
なお、日本国内にも、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン (USJ、大阪市此花区)の最寄り駅として「ユニバーサルシティ駅」が存在し、米側の主張にも一理あると言えそうだ。
3度にわたって変更を求められた形の福岡市は、ついに名称の変更を決断。7月27日になって変更を発表した。発表によると、
日本語表記を「ユニバーサルシティ福岡」から「ユニバーサル都市・福岡」に、英語表記を「UNIVERSAL CITY FUKUOKA」から「UNIVERSAL FUKUOKA CITY」に、それぞれ改める。
米側は、この変更に納得しており、すでに「異議は申し立てない」との連絡を受けているという。
市では、印刷物などの表記を徐々に切り換えていく方針で、
「ウェブサイトは、明日にでも書き換えたい」
と話している。