土用の丑の日にうなぎを食べたいと思っている人は多いが、値段が高騰しているため、なかなか手を出せないのが現状だ。
そうした中で話題になっているのが、「なんちゃってうなぎ」。穴子やサンマ、豚肉などの代替食材を使い、「うなぎを食す気分を味わいたい」ということのようだ。群馬県太田市では野菜のナスを焼きうなぎのタレをかけた丼を出したところ、大人気になっている。
「うなぎのようなナスです」
NHKが2012年7月26日に放送したローカルニュースがネットで話題になっている。太田市のある食堂で、うなぎのかば焼そっくりの味付けにした「ナスのかば焼き重」を出したところ、高騰を続けるうなぎと比べ安いこともあって、1日に30食を売り上げる人気メニューになった。
調理法は地元で採れたナスの皮をむき、うなぎを焼くように鉄板で焼きながらうなぎのタレを浸み込ませる。出来上がったものは色や形がうな重にそっくりだ。値段は600円。
この「ナスのかば焼き重」を食べた客は、
「食感はうなぎに近いです。美味しいです」
「うなぎのようなナスです。いい発想だと思います」
「このナス重でうなぎを食べたつもりにしています」
などと話していた。
太田市の観光課に話を聞いてみると、ナスをうなぎのように調理するのは市の名物ではなく、NHKが紹介した食堂が独自に考案したものだという。4年ほど前から出していたそうだが、話題が盛り上がれば同じようなメニューを出す飲食店が現れるかもしれない、と話していた。
うなぎの価格の高騰は養殖用のうなぎの稚魚が3年連続で不漁のため起こった。この春は供給不足でスーパーからうなぎが無くなり、うなぎ専門店でも仕入れができないことを理由に店を閉める老舗も現れた。ただ、ここに来て卸値が下がり、供給も戻りつつあるのだが、2011年に比べ、3割ほど高く販売しなければ採算が取れない状況が続いている。
豚バラ「蒲焼」と「キザミ」が当初予想の10倍売れる
そんな中でバカ売れしているのが太田市の食堂のような「なんちゃってうなぎ」。伊藤ハムが12年5月、「うなぎの価格が高騰しているための代用商品」として新発売した「豚バラ蒲焼」と「豚バラ蒲焼キザミ」が、当初予想の10倍売れ、なかなか手に入らない状態になった。これはブタのバラ肉をうなぎのタレで焼いたもので、「豚バラ蒲焼キザミ」をご飯の上に乗せると、うなぎに見えなくも無い。伊藤ハム広報では、
「品切れにならないよう供給に配慮したが、この売れ行きは年間を通じての定番商品として打ち出せる状態です」
と自信を深めている。
2012年7月27日の昼に都内の定食店に入ってみると、「さんまの蒲焼丼」を500円で出していた。今までは土用の丑の日にこの値段で「うな丼」を出していたが、採算が合わないため変更したのだという。
「せめてさんまで土用の丑の日気分を味わってもらえれば…」
と店主はすまなそうに説明していたが、店内は「さんまの蒲焼丼」の注文が多く、サラリーマン達は嬉しそうに食べていた。