ウナギをめぐる報道が過熱している。米国政府がアメリカウナギなどを野生動植物の国際取引に関する条約(ワシントン条約)で規制するよう検討を始めたことを受け、テレビのワイドショーでは「今年でウナギが食べ納めになるかもしれない」など悲観的な報道が相次ぐが、冷静な議論が必要だ。
ニホンウナギの稚魚は2010年から3年連続で不漁となり、蒲焼きなどの価格が高騰しているのは事実だが、「食卓からウナギが消えるほどの資源枯渇とはなっていない」と、水産関係者は困惑している。
「厳重に規制」の対象になるのか
米政府がワシントン条約で規制すべき動植物の検討項目のひとつとして、アメリカウナギなどを官報に掲げたのは今年4月。サメ類などの詳細な記述に続き、最後にウナギを列挙している。米国では4月に公表された情報だが、日本のマスコミが気付き、土用の丑の日(7月27日)を目前に控えた7月中下旬からあわてて騒ぎだしたのがというのが実態だ。
米政府の官報によると、米国はWWF(世界自然保護基金)など環境団体の提案に基づき、アメリカウナギとその類似種について、「現在は絶滅の恐れはないが、取引を厳重に規制しなければ絶滅の恐れがある」と同条約の「付属書Ⅱ」が定める規制をウナギに適用すべきか検討を始めたという。
ワシントン条約には、大きく二つのカテゴリーがある。「絶滅の恐れがある種」を対象に「商業目的の国際取引や捕獲の禁止」を定めた「付属書Ⅰ」と、「現在は必ずしも絶滅の恐れはないが、取引を厳重に規制しなければ絶滅の恐れがある種」を定めた「付属書Ⅱ」だ。
水棲動物の場合、Ⅰはミンククジラ、ジュゴン、ウミガメ、アジアアロワナ、シーラカンスなどがあり、商業目的の国際取引や公海での捕獲が禁止されている。
これに対して、Ⅱはジンベイザメ、ホオジロザメ、ピラルク、タツノオトシゴなどが指定されているが、「商業目的の国際取引や公海での捕獲は可能」という。「仮にニホンウナギがワシントン条約(付属書Ⅱ)の規制対象になったとしても、日本は中国や台湾の輸出当局が許可証を発給すれば輸入は可能で、直ちに輸入がストップすることは考えられない」と、水産関係の専門家は指摘する。