(ゆいっこ花巻;増子義久)
「人間って、周囲から必要とされていないと思う時が一番つらい。来てよかった」―7月19日から3日間、大槌町の吉里吉里海岸での清掃ボランティアに汗を流した野沢新二郎さん(63)は満ち足りた笑顔を見せた。左手と右足にハンディを抱えながら、愛知県大府市から25時間かけて車を運転してきた。「とうわボランティアの家」で一息ついた後、26日から3日間また大槌町に向かう。
名古屋市の職員だった6年前、長野県・志賀高原のスキー場で大けがをした。治療法もない難病と認定され、6級の身体障害者手帳が交付された。汗をかいた時などは他人の手を借りないと着替えもできないほどだった。リハビリテーションに励んだ結果、車を運転できるまで回復した。今年2月、豪雪に見舞われた新潟県・中越地方で雪かきボランティアに参加した。「スキー歴が長いので、雪のことは熟知している。9日間、雪かきをして少し自信が戻ってきた」と野沢さん。
しかし、今回の大震災の規模はケタが違う。ハンディのある体ではかえって、迷惑をかけるのではないか。でも、一度は生死の境をさ迷った身。生きている証しを実感したい…。こんなことを考えながら、インターネットと首っ引きでボランティアを探しつづけた。「で、やっとたどり着いたのが海岸の清掃だったんです。ふるいを使って瓦礫(がれき)を取り除く。これなら自分でもできるんじゃないか、と」
最初の3日間は砂浜を1.5メートルほど掘り、それをふるいかける仕事。石ころ、木片、看板、アスファルトの破片…入れ歯なども出てきた。震災の惨状が足元から伝わってくる思いがした。参加者は高校生などを含め、総勢約70人。手足に知覚異常を持つ野沢さんにとって、スコップを使った砂浜掘りはさすがこたえた。
「でも、ふるいの方は要領よくできた。犠牲になった人たちの無念を思いながら、黙々と作業を続けた。ハンディが逆に自分を奮い立たせてくれたような気がする。ここに足を運ばなかったら、一生悔いを残したと思う」。野沢さんはこう語り、「ボランティアの成績は真ん中ぐらいには入ったと思うよ」とニッコリ笑った。
ゆいっこ
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