「惨事の記憶が消えている」 鹿児島から来た単独ボランティア【岩手・花巻発】

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荷物の運び出しに汗を流す小田さん=花巻市下小舟渡の「ゆいっこ花巻」の物資倉庫で
荷物の運び出しに汗を流す小田さん
=花巻市下小舟渡の「ゆいっこ花巻」の物資倉庫で

(ゆいっこ花巻;増子義久)

   「顔は笑っているけれども心の中では泣いている。そのことが手に取るように伝わってきた」―小田虎男さん(67)は被災地での初めてのボランティア体験を こう語った。鹿児島市の自宅を車で出発したのは6月23日。土建業界の仕事が長かった小田さんがまず向かったのは福島県。「瓦礫(がれき)の撤去も遅れていると聞いた。自分にできることは土建の腕。でも、放射能の影響で個人のボランティアは断られた」と小田さん。


   「街自体が消滅した」と言われた仙台市荒浜地区に足を踏み入れた小田さんはその光景に息を飲んだ。「荒涼たる原野。地獄かと思った」。半月ほど農家の手伝いをした。畑を起こし、細かい目のふるいで瓦礫を取り除く仕事。真黒い土の中でガラス片がキラキラと輝いていた。「それが余りにも美しすぎるんです。だから逆に土が死んでいるという実感が強くって…」と小田さん。


   「遠い鹿児島では震災のことはもう、話題にも上らない。2万人近くも犠牲になった惨事の記憶がどこかに消えてしまっている。そのことが恐ろしかった」。 集落の自治会長などの役職が任期を迎えたのを機に鹿児島を飛び出した。2年前に始めた自営の土建業は臨時休業に。小田さんが日焼けした顔を崩した。「自分の目で確かめた被災地の姿を故郷のみんなにきちんと伝えなくては…。そんな一途な気持ちだった。まあ、後先を考えないオッチョコチョイかもしれませんね」


   「とうわボランティアの家」に現れたのは19日夕。「お世話になります。岩手の被災地の状況も知りたいと思って」。3泊4日の短い日程の中で小田さんは「ゆいっこ花巻」の物資倉庫の荷物の運び出しや沿岸被災地の仮設住宅の傾聴ボランティアに走り回った。22日、日本縦断のために北海道に向かった小田さんが爽やかな表情で語った。「宮沢賢治の寄り添いの精神の大切さが少し分かりました。帰りにまた、寄らせてもらいます」



ゆいっこ
ゆいっこネットワークは民間有志による復興支援団体です。被災地の方を受け入れる内陸部の後方支援グループとして、救援物資提供やボランティア団体のコーディネート、内陸避難者の方のフォロー、被災地でのボランティア活動、復興会議の支援など、行政を補完する役割を担っております。
ゆいっこは、「花巻」「盛岡」「北上」「横浜」「大槌」の各拠点が独立した団体として運営しておりますが、各拠点の連携はネットワークとして活用しております。
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