不要と判断すれば功労者でも「切り捨て」
ヤンキースは2009年のシーズン終了後、4年契約の最終年を迎えていた松井秀喜選手(現タンパベイ・レイズ)と契約を更新しなかった。この年、松井選手は前年の故障から復帰して28本塁打を放ち、ワールドシリーズでは最優秀選手(MVP)に輝いた。それでも球団は、別の戦力を優先して松井選手を引き止めなかった。常勝軍団を維持するため、不要と判断すれば功労者でも「切り捨て」をためらわない冷徹な姿勢がうかがえる。今季終了後にフリーエージェントとなるイチロー選手は、打率が低迷したままシーズンを終えれば再契約が難しいかもしれない。
とは言え、「もしトレード要員がイチローでなく、単に『打率2割6分1厘の外野手』との条件だったらヤンキースは興味を示さなかっただろう」(ESPN電子版)。キャッシュマンGMが、イチロー選手の守備力や、機動力をはじめ高い運動能力は衰えていないと評価しているのは確かだ。実際に盗塁数は例年より少ないものの、ヤンキースのレギュラー陣と比べると最多。移籍後の2試合では「レーザービーム」と呼ばれる強肩も披露した。ワールドシリーズを制するための「切り札」として獲得した意味合いは強そうだ。
「刺激を求めたい」と自ら飛び込んだ名門チームで期待通りの働きを見せれば、「イチローはレンタル移籍」(米ニューヨークタイムズ)「名ばかりの大型トレード」(米ニューヨークポスト)などとやゆするメディアを黙らせ、来季以降の契約を勝ち取るだろう。