「私は、『残れ』と言うことに関してはちゅうちょしました」
一方、細野氏自身は、
「ここで残れということは、彼ら(作業員)が命の危機にさらされるかもしれないと思うわけです。私は、『残れ』と言うことに関してはちゅうちょしました。言えないかなと」
と、かなり迷いがあった様子だ。
実は、細野氏が絶賛した一連の菅氏の判断をめぐっては、評価が割れている。上記の細野氏へのヒヤリング結果などをもとに作成された民間事故調の最終報告書では
「一定の効果があったものと評価される」
との記述があるが、7月23日に発表された政府事故調の報告書では、
「福島第一原発についての情報アクセスの改善という面では積極的に評価をすることも可能であるが、政府の対応に必要な情報は必ずしも東京電力に係る情報のみではない上、東京に本社本店のない他の電力会社の原子力発電所において同様の事故が発生する場合もあり得ることから、今回の事例を普遍的な先例とするべきではない」
と、消極的な評価にとどまっている。7月5日に発表された国会事故調の報告書は、さらに手厳しい。
「ベント、海水注入などの東電自身が対処すべき事項に関与し続けながら、一転して、東電社長の『撤退は考えておりません』という一言で発電所の事故収束を東電に任せ、他方で、統合対策本部を設置してまで介入を続けた官邸の姿勢は、理解困難である」
と、官邸の対応がブレたことを批判している。さらに、「撤退問題」については、
「当初から全員の撤退は考えていなかったものと認められ、上記の菅総理の行動によって、東電の全員撤退が回避された、という事実は認められない」
と、東電側に軍配を上げている。細野氏の「日本を救った」発言を真っ向から否定している形だ。