(ゆいっこ花巻;増子義久)
性別も年齢も職業もバラバラな"不良"たちがまた、やってきた。被災地支援は今回で10回目。代表の尾澤良平さん(27)は大柄な体に汗をしたたらせながら一気に話した。「正式な会員っていうのはいません。僕たちの考えに共鳴するする人たちがその都度、集まってくるんです。そんな共鳴者は神戸市を中心に500人ぐらいはいるんじゃないですか」
生みの親は阪神大震災の時に設立された「被災地NGO恊働センター」(村井雅清代表)。東日本大震災に遭遇し、村井代表はこう語った。「マニュアル化され、システムにはまった被災地支援には限界がある。十人十色の自発性、創造性、独立性を発揮するボランティアこそがその原型」。この言葉に突き動かされ、昨年4月に立ち上げた。「村井さんの考え方を表現するには"不良"がぴったりだと思った」と尾澤さん。
今回は女性2人を含めた総勢12人。年齢も20歳から64歳までで平均は50歳。職業も学生から大手企業の技術者、定年退職者など多彩だ。14、15の両日、「とうわボランティアの家」の調理道具を片っ端から車に積み込み、釜石市内の仮設住宅2カ所で「ばら寿司」(ちらし寿司)を振る舞った。連日、早朝 に出かけ、戻ってくるのは夜10時過ぎ。その行動力はまさに"不良パワ-"全開といった感じ。
神戸市内の大学3年生、井上莉果子さん(20)は東北も被災地も初めて。「遠く離れていると被災地の話題も少ない。記憶の風化というか、復興は終わったという雰囲気。でも実際に来てみると違う。表面的には確かに復興は進んでいるように見える。その一方で、将来に対する被災者の心の不安は大きくなっているように感じた。その見えない部分を少しでも実感することができた」と井上さん。
「お世話になりました。また、来ま~す」―。15日の朝まだき、夢心地の中でそんな声を聞いたような気がした。あわてて飛び起きると、教室の寝具はきちんと片づけられ、"不良たち"の姿はもうなかった。神戸の「風の又三郎」たちよ。また来る日を待っています。
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尾澤さんは2011年9月14日付朝日新聞「私の視点」に以下のような文章を寄稿している。参考までその内容を紹介する。
●3・11の被害は甚大だ。人手はいくらあっても足りない。それなのに「素人が行くと、かえって迷惑になる」などと伝えられ、二の足を踏む人が多いのは非常に残念だ。過去と同じ災害はない。被災者もボランティアも、十人十色。目の前で刻々と起こる事態に、できることを臨機応変にやるという型破りな「不良ボランティア」こそ、力になるはずだ。資格も経験も不要。自発的な思いやりが一番大事だと思う。
だから私たちは、参加を迷っている素人に向け、最初の一歩を踏み出してもらうため、「何もできないかもしれないから、何でもできる」と、メッセージを発信している。そして、神戸市からマイクロバスを運転し、岩手県遠野市に拠点を置くボランティア組織の「遠野まごころネット」と連携し、東北の被災地に向かう。
これまでバスに乗ってくれた人の中には、ボランティアの初心者、外国人、体力に自信のない人、障がい者、失職者、不登校児やフリーターなども含まれる。多様な人たちが、被災地のみなさんに受け入れられ、基本的に2日間の助け合いをこなした。 たとえば、障がいのある人だからこそ、被災地の障がい者、高齢者の気持ちや不便な点がわかる。泥かきができなくても、被災者に寄り添い、耳を傾けることができる。
災害ボランティアに関するシステムは、阪神大震災を教訓に整ったと聞く。被災自治体の社会福祉協議会が「災害ボランティアセンター」(ボラセン)を設置し、そこに組み込まれる形で、団体や個人が活動することが多い。でも、ボラセンの指示やマニュアルに縛られすぎていないだろうか。
活動は多種多様でいい。時には互いの思いがぶつかり、ケンカになるかも。それでも「被災者のためか」を判断基準にして話し合えば、解決策は出てくる。本当の意味の地域復興は、効率性の視点だけではできないと思う。市民の自発性ときずな、自治能力に価値をみる「新しい公共」の考え方を基本にするべきだ。
復興の原動力となるのは、既存の組織やシステム、ルールに従順な人たちではないだろう。型破りではあるが、弱者の痛みに素直に共感できる「不良ボランティア」のまごころだと信じている●
ゆいっこ
ゆいっこネットワークは民間有志による復興支援団体です。被災地の方を受け入れる内陸部の後方支援グループとして、救援物資提供やボランティア団体のコーディネート、内陸避難者の方のフォロー、被災地でのボランティア活動、復興会議の支援など、行政を補完する役割を担っております。
ゆいっこは、「花巻」「盛岡」「北上」「横浜」「大槌」の各拠点が独立した団体として運営しておりますが、各拠点の連携はネットワークとして活用しております。
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