TBSのバラエティー番組「有田とマツコと男と女」に、フランスのルイ・ヴィトン本部にヘッドハンティングされたデザイナーを名乗る女性が登場し、スカウトされた経緯などについて語った。ところが、話は全てウソで、TBSは2012年7月19日の放送と番組ホームページ上で謝罪した。
この女性が番組に登場したのはこれが2度目。最初に登場した2011年はイギリスの超有名ブランドのチーフデザイナーをしていると語っていた。なぜTBSはこの女性の嘘を見抜けなかったのだろうか。
「放送終了後、事実ではないことがわかりました」
TBSは7月19日放送の最後でこんな謝罪文を読み上げた。
「6月21日の回において『自分はルイ・ヴィトンのデザイナーである』という出演者の発言を放送しましたが、放送終了後、事実ではないことがわかりました。視聴者の皆さまに誤った情報をお伝えする結果になったことをお詫び申し上げます。また、この放送によってご迷惑をおかけした ルイ・ヴィトン ジャパン カンパニー様、関係者の皆様に謹んでお詫び申し上げます」
問題の番組は2012年6月21日に放送された「有田とマツコの超ド級暴露SP」。ホストやラブホテル経営者、歯科助手、占い師など様々な職業を持つ50人の男女が「公募」で選ばれて登場し、自分の年収などを公開した。その中にいたのがこの23歳の女性だった。
女性は、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン・ジャパンの本部にヘッドハンティングされ、現在はルイ ヴィトンのメンズ服担当のデザイナーをしている、と明かした。フランスの本部にはデザイナーが15人ほどいて、自分は日本とフランスを行き来し、年収は1000万円だと説明した。
司会の有田哲平さん(41)はルイ ヴィトンと聞いて驚き
「なんでこんな所に出てるの?世界的なデザイナーが」
と質問すると、女性は、
「有田さんが兄に似てて・・・」
と個人的にファンだからここに来ていると答えた。
デザイナーの前は医学部学生を名乗っていた??
このとき、司会の有田さんとマツコデラックスさんが、女性を疑っているようには見えなかった。
女性が番組に登場するのは2回目。1回目は11年7月に放送した若手の芸術家50人を集めたスペシャル番組だった。
女性は自身をイギリスの超有名ブランドのチーフデザイナーだと自己紹介し、「将来は自分ブランドを立ち上げてパリコレに出展するのが夢で、自分は販売員からの叩き上げだが、デザイナーで成功したあかつきには、ファッション業界を再編し優秀な人材が集まる業界にしたい」などと語った。
新進気鋭のデザイナーに見えなくもなく、ブランド名がわからないように音声加工されていたこともあり、問題にならなかった。6月の放送ではルイ・ヴィトンの名前がそのまま放送されたため、「ありえない!」などとネットで大騒ぎになった。ネットではルイ・ヴィトン ジャパンに「電凸」しようという呼びかけや、ルイ・ヴィトン本部やTBSに問い合わせてみた、という人も出た。
また、女性の過去のブログやメディアで語ったこと、同級生だったという人物の証言から、
「デザイナーを名乗る前は慶応大学医学部の学生を名乗っていたが全部ウソ」
「デザイナーになるのが夢の、売れない読者モデルだったようだ」
などといった噂がネットに出た。
女性のブログには抗議や非難が殺到したため、女性は2012年6月28日に、
「今月をもちましてファッション業界から去る事になりました。自身の社会人性の欠如が全ての原因です。今後は新しい道を納得行くまで探し歩んでいきたいと思います」
と書き、ブログを閉鎖した。ちなみに、ブログのプロフィールには「モデル兼ファッションデザイナー」と書いていた。
結局、女性が放送で語ったことは全てがウソだったわけだが、TBSはなぜこうした女性を同番組に2回も出場させたのだろうか。出演者の素性を確認せず登場させているのか、TBSに問い合わせたが、返事はきていない。