家電量販首位のヤマダ電機は2012年7月13日、8位のベスト電器を買収すると発表した。両社合計の売上高は2兆円を超える。薄型テレビの需要減などで縮小が続く家電量販市場では、6月にビックカメラがコジマを子会社化するなど再編の動きが加速しており、ヤマダの山田昇会長は同日、「(生き残るのは)将来は3~4社と思う」との見方を示した。
規模の利益をさらに追求
ヤマダはベストが年内に実施する第三者割当増資を121億円引き受けることで、現状7.5%の出資比率を51%に高めて子会社化する。ただし、ベストの上場は維持し、小野浩司社長らベストの主要役員は留任。「ベスト電器」の店舗名も維持し、ベストの独自性に配慮する。
販売時点情報管理(POS)などのシステムを共通化し、顧客に配布している「ポイント」も統一する。物流網の相互活用や共同仕入れなどを通してコスト削減を図る。ベストは「ニューマネー」として受け取る121億円を老朽化した店舗の改装などにあて、収益改善を急ぐ。
山田会長は会見で「規模の利益を追求する」と買収の狙いを強調。2位のビック・コジマ連合の2倍程度の売上高で、ダントツの業界首位でありながら、さらに現状3割程度のシェアを拡大することが有効、との考えを示した。ただ、ベストの地盤の九州では両社合計シェアが過半となっており、公正取引委員会が独占禁止法に抵触するかどうかの審査を進めている。
売上減少でさらなる再編へ
家電量販店が再編を急ぐ背景には、市場縮小がある。「目玉商品」である薄型テレビの国内出荷台数は家電エコポイント終了や地上デジタル放送への完全移行を経て、反動減に苦しむ。今年1~5月は前年同期比66%減と低迷。M&A(企業の買収・合併)も含めて拡大を続けた首位のヤマダも2012年3月期は売上高が減少に転じた。前期比15%減の1兆8354億円で、前期(2兆1532億円)に達成した2兆円も割り込んだ。
ネット通販の台頭も再編の背中を押している。ネット社会で先行する米国ではアマゾンなどの勢力拡大で家電量販店の破綻が珍しくなくなっている。国内でもアマゾンは売上高などを公表していないが「確実にシェアを拡大している」というのが業界共通の見方だ。
こうした中、山田会長ならずとも、家電量販店のさらなる再編は避けられないと見られている。現在すでにヤマダ・ベスト連合、ビック・コジマ連合、エディオン、ケーズホールディングス、ヨドバシカメラの5グループにほぼ集約されている。後は大阪が地盤で売上高4000億円余りの上新電機が「準大手」として続く。テレビ以外の目玉商品に乏しく、当面は縮小均衡が続くと見られる中、再編に向けて各社の動きが注目されている。