プロ野球の労組にあたる日本プロ野球選手会がワールド・ベースボール・クラシック(WBC)への不参加の方針を決議したことが、論議を呼んでいる。スポーツ紙は否定的な論調が多いが、ファンの見方は必ずしもそうではないのだ。
選手会は2012年7月20日、大阪市内で臨時大会を開き、13年3月に開かれる3回目のWBCへの不参加の方針を決議した。米大リーグ機構などで大会主催者に対して、不均衡な収益配分の改善を求めてきたが、これが改善されなかったためだ。06年と09年の行われた過去の大会ではいずれも日本が優勝しており、3連覇がかかっていただけに、波紋を呼んでいる。
サンケイスポーツなどは「大会に参加」を主張
濃淡の差はあるものの、スポーツ紙の論調は、この決議に否定的なものが多い。
12年7月21日の在京スポーツ紙6紙は、いずれもこの話題が1面トップ。1面または2面に、「記者の目」と題した論説記事が載っている。6紙のうち3紙が、決議への違和感を比較的ストレートに表明している。例えばサンケイスポーツは、条件改善に向けての交渉が進んでいることを理由に、
「選手会も今回の決議を、不参加の最終決定にすべきでない。大会に参加しつつ、強豪国として将来への発言力を確保する道をとるべきだ」
主張。
スポーツニッポンは、
「国民には金銭で計れぬ価値があるはず」
との見出しを掲げ、
と、プロ野球人気の低下に歯止めかかからなくなることを懸念している。
スポーツ報知は、
「本当に不公平か NPBは説得を」
「MLB関係者は、『選手1人当たりに換算すれば、配分を25選手で分ける日本の方が多くなる』と主張している。もちろん、簡単な割り算の問題でもないが、単純に日本ばかりが損をしているとも言えない。『選手会はこの構図をよく理解していない可能性がある』と話す大会関係者もいる」
と、すでにWBCへの参加を表明している日本野球機構(NPB)に対して、問題の構造を丁寧に説明した上で選手会の説得にあたるように求めた。
東京中日などは選手会に理解示す
他3紙は、より選手会側の立場に理解を示す形の論説となった。東京中日スポーツは、
「加藤コミッショナーの行動力のなさが今回の事態を招いた」
として、
「不参加が現実味を帯びてきた元凶はこの問題を前回大会以降、ずっと『放置』してきたことにある」
と指摘。デイリースポーツも同様に、権利関係をめぐる問題が放置されたことを批判しながら、
と嘆いた。
日刊スポーツは、
「米国側との交渉を考える前に、まずは『国内問題』を解決した方がいい」
と説く。
「今回の不参加決議は、選手会の主張が置き去りにされたまま、日本の出場を前提とした準備が着々と進められている。その不信感が積もり積もった結果ともいえる」
と、NPBと選手会とが密にコミュニケーションをとって一枚岩になるように求めた。
ヤフーアンケでは3分の2が「決議に納得」
一般の野球ファンは、比較的選手会側を支持しているようだ。たとえば、ヤフーが「あなたは選手会の方針についてどう思いますか?」との設問でアンケートを行ったところ、、現時点で投じられた約17万票のうち、約66%が「納得できる」と回答。「納得できない」との声は28%にとどまっている。
この問題をめぐっては、すでに参加を表明している日本野球機構(NPB)が、早急に選手会側と話し合いの場を持ちたい考えだ。