(ゆいっこ花巻;増子義久)
「誤解を恐れずに言えば、今回の大震災の被災者、とくに放射能禍に苦しむ福島の人たちと不登校児は時代の最先端に立たされているのではないか。この新しい出会いの中から未来の道すじをつかみ取れれば…」―不登校児などが学ぶフリースクール「NPO法人ワンネススクール」(石川県白山市)の代表、森要作さん(49)は11日から5泊6日のボランティア活動の意義をこう語った。
同法人は1993年、「若者・子どもの『自立』と『働く』を支援します」―を目標に掲げて設立された。現在はフリースクールのほか「杜の学校」、「ワンネス高等学院」、就労支援事業「ムーブ」などを運営。廃園になった保育所を中心に様々な年齢の子どもたちが薪割りや畑仕事、郷土の伝統などを学びながら、 自らの生活を創り出す「生活力」を養っている。
そんな活動を模索しているさ中にあの大震災が発生した。「ワンネス」(Oneness)とは文字通り「ひとつにつながる」ということ。「被災地支援を通じて今までになかったつながりを作りだしたいと思った」と森さん。これまでに岩手の被災地を7回訪れたほか、福島の子どもたちを石川県に招くなどのイベントを5回企画した。昨年8月には小学校低学年の22人が2週間合宿し、県内各地で川遊びや竹トンボ作り、餅つきなどに興じた。「マスクを外した時の子どもたちの笑顔が忘れられない」と森さんは話した。
今回はフリースクールの生徒7人を含む総勢15人が10時間をかけて「とうわボランティアの家」に到着した。最初の2日間は沿岸被災地の草むしりや花壇づくりに汗を流した。高等学院に籍を置く山崎亮輔君(17歳)は今回が5回目の参加。「先生に誘われたから…」と動機を語った山崎君が口をもごもごさせながら続けた。「っていうか。とりあえずは一人の人間として、何か役立つことをしたかったのかな」。森さんが小声でつぶやいた。「亮輔は学校にはあまり来ないのに、ボランティアというと目の色が変わるんですよ」
同行した白潟美栄子さんは2年前、一人っ子の翔弥君(当時18歳)を病気で失った。小中学校時代はほとんど学校に行かず、フリースクールに在籍した。高校に入学するとバトミントン部に入ったり、囲碁に励むなどしたが、そんな時の突然の死だった。茫然自失する白潟さんは天から言葉が降りそそいでくるような不思議な体験を味わった。「翔弥からのメッセージかも知れない」と絵本にすることを思い立った。
『お母さん ぼく星になったよ』(B5版、32ページ)が地元の出版社から刊行されたのは大震災直前の3月3日。未曽有の惨状を目の当たりにした白潟さんは「大切な人を亡くした人たちが悲しみを語り、共有する会」―「星になった子どもたち」を設立した。今回も絵本を持参し、被災地の仮設住宅で朗読した。「大船渡では身内を亡くした被災者が涙をボロボロ流しながら聞いてくれた。今後も被災地を訪れ、悲しみを共有するような活動を続けたい」と白潟さん。一行は釜石の仮設住宅に暮らす子どもたち10人を盛岡市内のキャンプ場に招くため、14早朝出発した。
ボランティア最終日の15日、白潟さんはフルースクールの生徒たちの前で『お母さん ぼく星になったよ』を朗読した。「今回の震災で犠牲になった人たちを含め、死んだ人はどこかで僕たちとつながっているんだね」。みんな同じような感想を口にしていた=とうわボランティアの家で
ゆいっこ
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