三菱自動車が最高級セダン「ディグニティ」と「プラウディア」を日産自動車からのOEM(相手先ブランドによる受託生産)で復活させ、2012年7月26日に発売する。姉妹車のディグニティとプラウディアは、かつての三菱自の最高級車「デボネア」の後継車として2000年にデビュー。当時は「三菱の技術力をアピールする国産最高級車」(同社)として、東京・丸の内界隈などで独自の存在感を示したが、市場の評価を得られず、短命に終わった。それが十余年の歳月を経て、ディグニティは日産シーマ、プラウディアは日産フーガをベースに復活するというのだから、自動車業界の変化の荒波を感じずにはいられない。
フラッグシップのOEMは初めて
軽自動車や商業車で大手メーカー間のOEMは珍しくないが、それは自社ブランドにあまり関係のない白物家電のような実用車の世界だからだ。自社のフラッグシップとなる最高級車がOEMとなるのは、もちろん日本では初めて。海外でも恐らく前例がないだろう。これは近年、戦略的に提携関係を深める日産と三菱自の親密度を象徴する出来事と言える。
姉妹車のディグニティとプラウディアは、デボネアの後継車として2000年に三菱自が自社開発で発売した。ディグニティはプラウディアの全長を5335ミリに伸ばした豪華リムジンで、V型8気筒DOHC32バルブ、4498ccの大型エンジンを搭載。トヨタセンチュリー、日産プレジデントに匹敵する日本の最高級車として君臨した。これだけの大きさのボディーとエンジンを持ちながら、2代目以降のデボネアと同様、前輪駆動(FF)と先進的で、室内がフラットで広いのが特徴だった。
しかし、ディグニティ、プラウディアとも三菱グループの社用車として利用された程度で、一般のオーナーにはほとんど普及しなかった。このためプラウディアは1228台、ディグニティーはわずか59台が生産されただけで2001年には生産中止となった。2000年代初頭、東京・丸の内や大手町界隈では、三菱グループの社用車としてたまに両車を見かけたが、生産台数が少ないこともあり、今日では両車を見かける機会は皆無に近い。
EV開発で相乗効果
三菱グループには社用車となる高級車が10年以上も存在せず、一部では待望論が強かった。しかし、リコール問題で経営が悪化し、選択と集中を迫られた三菱自に自社開発の余力はないため、日産からのOEMで落ち着いた。日産と三菱自は国内で軽自動車を共同開発する合弁会社「NMKV」を2011年6月に設立するなど、2010年12月に事業協力関係の拡大で合意して以来、親密度を高めている。
日産にとっても、新型として復活したばかりのシーマとフーガを三菱グループの法人契約を中心に販売するメリットは少なくない。既に日産はミニバン「NV200バネット」を三菱自にOEM供給しており、三菱自は軽商用電気自動車「MINICAB-MiEV(ミニキャブ・ミーブ)」を2012年度中にOEM供給する。日産、三菱自とも電気自動車(EV)の開発では他メーカーに先行しており、この分野では相乗効果が期待される。OEMで関係を深める両社の次の一手が注目される。