滋賀県大津市立中学2年の男子生徒が自殺した問題で、学校が行った生徒アンケートの結果を父親が見たところ、口外しないよう誓約書を取られていたことが分かった。学校側にいじめを隠す意図があったのではないかと、疑問の声が出ている。
2012年7月11日放送のTBS系ニュースでは、「確約書」とタイトルのついた誓約書を写真付きで紹介した。
生徒アンケート結果は「部外秘」だった
大津市立中学校では2011年10月、全校生徒にいじめのアンケートをとり、そこには、生々しい暴行などの様子が書き込まれた。誓約書を取られたのは、その生徒アンケートを被害生徒の父親が見せてもらおうとしたときだ。
ニュースによると、アンケには個人情報などが含まれているとして、父親は「部外秘とすることを確約いたします」との文面に署名させられた。父親は、取材に対し、「やむなくサインしたものの、真相の解明が遅れる原因となった」と漏らしたという。
学校が11月に2回目のアンケをしたときは、「自殺の練習」などの書き込みがあった。しかし、新たな事実がなかったとして、父親には見せていなかった。
いじめを巡っては、自殺との因果関係を不明と判断した当時の内部会議の議事録などがないことを大津市の越直美市長が明らかにしている。いじめの調査報告書も作っておらず、こうしたことから、ネット上では、誓約書についても隠ぺいの意図があったのではないかとの疑問が相次いでいる。
そこで、真意について聞こうとしたが、中学校は電話がつながらず、市教委も協議中などとして取材できなかった。
文科省の児童生徒課によると、生徒アンケートの取り扱いなどに関しては、「児童生徒の自殺が起きたときの背景調査の在り方について」という11年6月1日付通知で示している。
教育評論家「おかしさに気づくべき」
遺族への対応について、文科省児童生徒課では、こう説明する。
「そのご要望、ご意見を十分に聞いて、できるだけの説明をすることになっています。生徒アンケートを遺族に見せることのいい悪いは言えませんが、アンケの内容説明は必要だということです」
ただ、アンケについては、「安易な公表は避けるべき」だとする。
「アンケだけで、いじめについて判断されるべきではありません。いろいろな観点から、その事実関係を調査する必要があります。ですから、公表によって、アンケの内容が一人歩きして情報が混乱するのは好ましくありません。誓約書のいい悪いは言えませんが、アンケの取り扱いは慎重にすべきです。誓約書があるとすれば、学校側はそれを踏まえた対応をしたのではと思います」
大津市立中学校の説明に問題はなかったかについては、「事実確認をしている最中ですので、何とも判断できません」としている。
教育評論家の尾木直樹さんは、中学校などの対応には疑問があると言う。
「デリケートな問題なので、生徒アンケの取り扱いについて、お互いに気をつけましょうというのなら分かります。しかし、誓約書という形で取るのはいかがなものかと、不快感を持ちますね。そこまでするなら、学校側の調査も厳密にあるべきだと思うからです。アンケの結果も発表せず、『葬式ごっこ』などの記述も見落としており、自分たちのおかしさに気づくべきですよ」